失うものと中年フリーターと。女性経営者の言葉に見る格差社会と自爆型犯罪


『ニート』という言葉が日本国内で爆発的に流行して10余年が経った。

その"ニートブーム"絶頂期とも言える2006年に、ニート・フリーターという生き方を
してきた人間の本質と末路とも言うべき未来を見抜いていた女性経営者がいる。
NTTドコモが99%出資して設立された子会社『アルシェール』の大野聡子社長だ。

大野氏は自身のブログにおいて「無所属な人は何をするかわからないので怖い」と書き、その理由を「守るべきもの、失うものがなく、踏みとどまれないから」とした。
2008年6月には2ちゃんねる開設者の西村博之氏も大野氏と
ほぼ同様の理由から彼らニート・フリーターなどを『社会的信用の無い人』
とした上で、逮捕や刑罰を恐れない『無敵の人』と呼んだことが話題になった。
その後『無敵の人』はネットスラングとして広く定着した。

あれから10余年の今。年号は平成から令和に代わったが、
望んだニートも望まなかった氷河期フリーターも、救われることなく高齢化のまま"漂流"し続け、日本の"格差"はさらに広がりを見せる。

現在の主な議論は彼ら氷河期世代の生活を保護する財源についてだ。
政府は彼ら氷河期世代が子孫を残せぬまま死ねば済む問題と楽観視しているが、氷河期世代の『中年フリーター』がこのまま高齢化すると、将来的にその生活保護費は20兆円から30兆円にも増すという衝撃の試算もある。

一方、懸念されているのが、彼ら自暴自棄の中年無職
すなわち大野聡子氏が言う「守るべきもののない無所属な人」、西村博之氏が言う『無敵の人』たちによる
自殺をいとわない自爆型犯罪だ。

5月には川崎で45歳の引きこもりの男が女児と外交官の命を奪った事件が発生した。
今回、34人が命を奪われた京都アニメーション放火殺人事件でも
容疑者は41歳の氷河期世代、そしてやはり無職だ。

自己責任を押し付けられて切り捨てられ中年化したニート・フリーターたちによる、いわゆる『リア充』への攻撃をどう防ぐか、社会が一丸となって考える時期に来ているのではないか。