2月某日、失踪しようと消費者金融に行き、契約しかけた。
失踪のための資金を借りるために。でも結局度胸が無くて帰ってきた。
過去にも仕事を辞めようとか、思い立ったこともあるけど結局今の日常に帰ってくる。
だけど、あの失踪を考えた日から、もし失踪していたら今は何をしているか、と夢想する。

おそらく2週間くらいで金が尽きて、寒いところはつらいのできっと南の方に移動してるだろう。
そこで住み込みの仕事が見つかるか、貧困ビジネスへ取り込まれてる。
軟弱な俺はもしかしたらもう心が折れて家に帰っているかも知れない。

仕事も家もつらい。こんな人生を、若い時は考えていなかった。
でも、周りの人たちはきっと俺がこんなことを考えているなんて知らない。
俺も誰にも話さない。お酒を飲んだ2時間だけは別世界にいける。

久しぶりに実家に帰ってみた。両親は暖かく迎えてくれた。
通っていた中学校に行ってみた。景色は変わっていたけど匂いは変わっていなかった。
それとともに昔のことを思い出した。いい思い出ばかり。
でもきっと当時はいいことばかりじゃなかったはず。
時は人の記憶から悪い記憶だけを沈殿させ、上の澄んだ綺麗な記憶だけを残していく。
今の俺も、老人になった時には良い思い出しか残らないのだろうか。
毎日毎日芋焼酎を飲むしか楽しみが…無い。