新たな家見つからず漂流

全国の借家の数は増えてはいるが、家賃5万円以下は減少している。
そのため一人暮らしや低所得者がはじき出されて「漂流」する。
竜崎猛さん(80)は連帯保証人が壁だった。40代後半に横浜で営んでいた運送会社が倒産して、
妻子とも別れ身寄りがない。不動産屋が恐れるのは孤立死だ。
住人が死亡し、部屋の床や壁を張り替えても、保証人がいないと費用は大家の負担になる。

「最終的には首でも吊るか」と言っていた竜崎さんは、幸い家が見つかり、立ち退き料を得て引っ越せた。

神戸大学大学院の平山洋介教授は「立ち退きを迫られても、あわてないこと」という。
「借地借家法で守られています。弁護士の無料相談制度、高齢者支援団体、借家人支援団体などの相談窓口もあります」

日本の住宅は61.7%が持ち家で、賃貸は28%、公営住宅はわずか3.8%だ。
老朽化が深刻なのは賃貸住宅だ。NHKが民間研究所に委託した分析調査では、
築40年以上の賃貸集合住宅は、昨年(2017年)は7%だったが、5年後には14%、10年後には25%になる。

平山教授「日本の住宅政策は、高度成長期は中間層の持ち家支援が中心でした。
いまは低成長、高齢化、所得も落ち、条件がガラリと変わったのに、政策の転換ができていないんです。
とくに低所得者向けの住宅政策が弱いですね」

公営住宅3.8%は先進国では低い。また、政府の家賃補助制度がないのも先進国では珍しいという。