悪魔バスター★スター・バタフライ 【SVTFOE】 ★7
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彼女に恋人が出来た
坂の上に行った時
彼女本人から、伝えられた 彼女の言葉で
「彼氏ができちゃった」
楽しそうに笑う彼女を見て、俺はおめでとう、って笑った 嬉しそうに話すんだ
何も知らずに、写メまで見せてきやがって
とても優しそうで、人のよさそうなメガネの男性がいた
先輩らしい
うん、これなら安心だ って自分を納得させた
彼女が好きになった人だ、間違いなくいい人なんだろう 悔しかった
正直、めっちゃ泣いた
なんか傲慢だけど全てを失った気がした
ぜーんぶ、俺が悪いんだけどね。
それからは再びまったく坂の上に行かなくなった
ひたすらに勉強に打ち込むようになった
現実逃避で勉強に夢中になった それからは瞬く間に時が過ぎて
センターも、特に緊張することはなかった
死ぬ気で勉強して、まったく滑る気なんてしなかったんだ
誰に応援されることもなかったが
とにかく早く大学に行って、俺も遊んでやろうって考えていた
センター問題なし、2次試験も。
俺は危なげなく、志望通り地元の大学に通うことになった
ただ、気にかかっていたのは
国立2次の前日に彼女から
「頑張ってね」ってメールが来ていたことだった こうして一年遅れで俺は彼女と同じ大学に通うことになった
とは言え
学部が違うので最初はほとんど会わなかった
俺は怒涛のように渡される新歓コンパのビラを一切受け取らなかった
あれだけ大学をエンジョイしようと考えていたのだが
実際大学に入ってみるとどうでもよく感じられ
何もやる気がなくなった それでも、大学の暮らしは決して悪くなかった
学部に仲の良い友人もでき
女っ気こそないものの、バイトも始めて楽しい日々を過ごしてた
5月にハタチの誕生日を迎えしばらく経った頃
俺は一丁前に煙草を吸い始めた
本当にただのかっこつけだった そんな俺は、大学帰り
本当に何も考えず、坂の上に行った
そういえば、ここで煙草を買ってみたいなって、純粋に思った
ひどい夕立で、急いで走って坂の上に駆け込んだのを覚えてる
まだコンビニで買うのも微妙に抵抗があったし
ちょうどいいなって思ったんだ そこには無表情で、メガネをかけてパソコンをいじる彼女がいた
俺は手にタオルを持ったまま放心した
「いらっしゃい…」
そう言って彼女も俺と同じように驚いたようで、ピタっと動きが止まった
大学でも一度も顔を会わせたことがなく、本当に久々だったので
俺は心底動揺した。
まさか、彼女がいるなんて思っても見なかった
そんな期待、していなかったのだ 「久しぶり、凄い雨。大丈夫?」
そう言って彼女は喋り出した。
俺は、あぁ…みたいな良く分からん相槌を打ってしまった
「暖かいもんあったかな?」と言いつつ彼女は一旦に中に引っ込んでしまった
「あったよ〜」と言いつつ、彼女は熱いお茶を持って再び現れた
俺は目の前で起こっていることに対応しきれず、
お茶をもらって「う、うぃす…」
みたいにまったく意味不明の態度をとっていたw 彼女はお茶を飲んでいる俺をじーっと見つめていた
もう、緊張してお茶どころじゃなかった。
彼女「メール返ってこなくて心配してたけど、良かった。」
唐突に彼女は言い始めた。
俺「え?」
俺は一瞬なんのことかサッパリ分からなかった あのメールのことだった
入試の前日に、突然やってきた激励のメール。
俺は、別にわざと返さなかったわけではない
本当に嬉しかったし、勇気が出た
でも彼女に恋人がいたのも知っていたし
俺が彼女に変に関わってしまうのも申し訳ないだろうと思い
色々考えた結果、返信しなかった
それが俺なりのけじめだったし、
彼女を無理に諦めるためになかば強引に返事を我慢したのだ まあよく考えればメールの一通くらい返すのが常識だろ、と思うけど
その一通がダメだったりする俺はそう考えていた
俺「あ、うん…あれはごめん…でもありがとう」
彼女「お母さんに聞いたんだよ、◯◯君合格したんだって。
本当によかったね。」
そのあと、しばらく沈黙して、嫌な時間が続いた
俺は目の前にいる彼女に、何を言えば良いかさっぱり分からなかった。 俺「あのさ、彼氏さんとはどう?」
とっさに出た一言がコレだった。
彼女はうつむいた 初めて見るような表情だった
彼女「別れたよ…」
彼女はまたうつむいて黙った
俺「そうなんだ、ごめん…」
どうして?とは聞けなかった
何か事情ありげだったから、聞けなかった 俺は、その後クールぶって
「CABIN一つ。」と言って、店を飛び出た。
土砂降りの雨の中、思いっきり走った
もうどうでも良かった
やった やった!!
俺は手を思いっきり握りしめて全力で走った
もう本当に嬉しくなって楽しくなって
ひたすらテンションが上がった 彼女が別れたってのに、喜ぶなんてひどい話だが
現に、彼女は悲しんでいるだろうに…
でもそんなことは、ほんっとうにどうでも良かった
彼女が、ひとりに!!
もうその想いしかなかった
今度こそ、今度こそ!
絶対に彼女に向き合おう、俺はただそう考えて
一人で本当にハイになった 今まで、どれだけ彼女を見て、彼女に焦がれてきたかことか。
今度こそ、彼女に伝えよう、彼女と向き合おう
そう思うと胸がワクワクしてドキドキして、いてもたってもいられなくなった
彼女に何を言おう?彼女とどこへ行こう?
今まで色んな制約でとどめていた彼女への想いが、一気に爆発した。
何をしたら喜んでくれるかな、何を言ったら笑ってくれるかな
俺の心のなかはあっという間に彼女で一杯になってしまった 大学で、毎日彼女を探すようになった
毎日、坂の上を見に行くようになった
もう、なにも取り繕う必要はない
自分に嘘をつく必要はない
彼女を心から好きになっていいし、目一杯彼女のことを想っていい
そう考えた瞬間、本当に急に毎日が楽しくなった
「ああ、生きてるなあ」ってひしひしと感じるようになった それから、彼女とはたまーに一緒に帰るまでになった
電話とかもちょいちょいするようになった
来ている…来ている。
俺はもう毎日が楽しくて仕方なかった
夏休みが待ち遠しくて仕方なかった
ずっと思い焦がれていた子と気兼ねなく仲良しでいられる
それだけで、本当に嬉しかった 夏休みになったらすぐだ
俺からデートに誘った
生まれてはじめて女の子を遊びに誘ったよ
待ち合わせ場所に、彼女がいる喜び
俺は嬉しくて死にそうだった
二人顔あわせて「いこっか」って行って歩き出す
何もかもが初めて
そして目の前に最高の相手、夢のようだった よく分からない俺はボーリングに誘った
映画とか、カラオケの方が良かったのかな?
二人で電車に乗って街へ出てボーリングした
ほんと、中学生みたいだなw
でも、何をしてても彼女は本当に楽しそうにしてくれるので
俺は安心だった 俺がストライクとると
「すごー!」って言って
手を叩いて喜んでくれる
自分がストライクとるとピョンピョン跳ねて喜んでさ
本当に可愛いかったよ
で、テキトーに買い物行ったりフラフラして
二人で一緒に帰って、坂の上に戻ったんだ 坂の上のベンチに二人で座ってアイス食べた
俺にとっての思い出の場所。
きっと、彼女にとってもそうだろう
暑くて蝉がうるさくて、とても居心地が悪いんだけど
何度も来てしまう
そして今は彼女と二人で 隣を見ると、彼女笑って嬉しそうにアイスを食べてる
その光景が可笑しくて微笑ましくて
なんとも幸せな気持ちになった。
俺は最高の気分だった
彼女のことをずーっと想おうって考えていた
そして、俺と彼女の最初で最後のデートは終わった 夏休みが明けると、彼女は大学を中退していた
あまりに突然のことで、俺も最初はまったく整理がつかなかった
何があったのか、さっぱり分からない。
彼女から突然
「ごめんね、私大学辞めました。もう会うのは難しいよ」
というメールが届いたのだった その後、彼女から電話でことの経緯を聞いた
どうやら、彼女の昔の彼氏が
煙草屋からたびたび目を盗んでは売上金を盗んでいたらしい
そして、彼女は彼氏と別れたそうなんだが
その件で父と母が散々揉めたらしい もともと彼女の両親はそんなに仲良くなかったのだが
その一件でめっちゃ揉めて夫婦仲が一層悪くなったらしい
最初は彼女の一件でもめていたのが次第にエスカレートし
なんと父親は不倫までしていたということが明らかになったらしく
両親は離婚
彼女の母が実家に帰ってしまったらしく
父の事を本当に許せない彼女も
母と一緒に家を出ていったらしい、大学をやめて 俺も耳で聞いただけだから
どうしてそういう決断に至ったかはよく知らないし
きっと色々事情があったんだろう、彼女の家なりの
ただ、俺にとってはそんなことはクッソどうでも良かった
重要なことはただ一つ
彼女が目の前からいなくなってしまったということだけだった バカなんじゃないのか?
と思った どうしてまたどっか行ってしまうんだ?
彼女の母の実家
彼女のいる場所は、俺の家から車でゆうに8時間以上はかかった。
遠いなんてもんじゃない
下手したらもう一生会えないんじゃないのか?俺はショックだった 彼女が大学をやめて遠方の地に行ってからの俺は
空っぽだった
マジで抜けがら。
講義も単位ぎりぎりまでサボった
家で煙草をふかして一日中パソコンに向き合うことも多くなった
最初のうちは彼女に何度か電話したが
向こうで仕事に就いたらしく
次第に連絡も少なくなった 3ヶ月くらいが経ったのち
寒くなってきた頃、
坂の上はシャッターを下ろした。
彼女のお婆ちゃんが体調を崩し
店番をする人がいなくなった店は
二度とシャッターが開くことはなかった
身の回りの、彼女の面影があるものがどんどん消えていった 年が明けると
一緒に行ったボウリング場も潰れた。
本格的に、彼女が本当にこの街にいたのか怪しくなってきた
幼い頃から、本当に一緒に過ごしてたのか
記憶だけになってしまった彼女を思い出すのが本当に辛かった
俺は車の免許を取ることにした
幸い非リアでバイト充だった俺は
貯金はそれなりにあったのだ 冬休み、春休みを利用して教習所へ。
免許をとって、自らの手で彼女のいる所へ
どうして車じゃなきゃいけなかったのか分からんが
なんとなく公共の交通機関じゃなく、車で行きたかった
でも、通い始めて気づいたけど
自動車教習ってクソだるいんだよな なんとか、冬休み春休みを返上して
免許はとれそうだった
路上教習になったあたりから
一人の女の子とよく時間がかぶるようになった
彼女は大学進学を控えた高校生で
しきりに「免許とったら何する?」って聞いてきた 俺はその子が苦手だった
妙に騒がしくて、うろたえてしまう
「あたしはねー、友達と旅行行くのー」
と聞いてもないのに話してくれた
それで俺に
「ねーねー俺さんはどこ行くのー?」
と聞いてくる おそらく、今時のどこにでもいるいい子なんだろうが
俺は嫌だった
一番触れてほしくないところに土足で踏み込んでくるような
今思えば、俺はなんてつまらん人間だったんだろうな
「どこも行かないよ」
そう言うとその子は冷ややかな目で俺を見て、口をきかなくなった
てきとーに答えたの、ばれたんだろうな それからその子と教習の時間がかぶることも多く
待合室が気まずかった
意地はったこと後悔した
正直に、何をしたいか言えばよかったのに
俺の中で、まだ遠くに行った彼女のことを
想い続けてることに、恥ずかしさがあったんだろうな… その子とは卒検がかぶった
試験のあと、その子を呼び止めて
「今までありがとう」と言ってみた
すると意外にもその子は笑って
「こちらこそ」と嬉しそうに言ってくれた
俺は思い切って
「車で好きな人に会いに行ってみる」と言った
馬鹿にされると思ったけど
その子は笑って頷いてくれた 免許をとると休みは終わり
学年が一つ上がった
段々暖かくなってきて、季節の変わり目と言ったところ
授業は目一杯つめこまれており
いつ彼女に会いにいくか途方に暮れた
夏休みしかないな、ってこのあたりで感づいた 忙しさからなのか
俺のことを忘れたのか
この頃から彼女とはあまりメールできなくなっていた
もう半分諦めてたもんな、連絡つけばラッキー、くらいに
5月の頭くらいに、彼女に
「8月に休みとってほしい。できるだけ長く。」
とメールを打った 案の定メールはしばらくなかった
一週間くらいしてから
「分かったよ。」とだけ返事があった
離れてしまってから、お互い連絡を本当に控えていた
俺は、離れてしまったら絶対結ばれることはないし
彼女の変な足かせにならないように、と連絡を遠慮していた
彼女もそうだったんだろうか
距離が、お互いに気を使わせる原因だったのかな 俺はそれから
無心で過ごしていた
彼女のことを考えないようにして
浮かないように上手いこと周りにも合わせつつ
日々をやり過ごした
あまり面白くはなかった
友人は好きだったけど
楽しくはなかった 段々暑くなってきて
夏休みも目前に迫ってきた頃
彼女から一通のメールが来た
「8月、来るの?」
俺は、「行くよ。たくさん話そう。」と返した
すると、「風鈴買っとくね」
という意味不明なメールがあって、メールはそこで切れた 必要以上の連絡のやりとりを全くしなかった俺達
それが良い事か悪いことかもよく分からなかったけど
8月になって、とうとう彼女の家に向かう日となった
運転にはだいぶ慣れていたが
初の長距離運転に、不安を感じずにいられなかった 田舎から田舎に移動するという、
あまり変わり映えのしない旅ではあったが
途中一人でSAによって煙草をふかしたり
写真を撮ったりして
一人で長距離運転で旅するのは悪くなかった
すっかり夏で、少しノスタルジーな音楽をかけながら
冷房をきかせて高速をひたすらに走るのは、
とても気持ちがいいものだった 夕方になった頃、高速を下りて下道になると
それなりの田舎が広がっていた
というか、山だった。山のふもと?
本当に何もない、山間部にぽつりと集落があるような…
近くまで行くと彼女に電話した
しばらくすすんだ道の脇に彼女が立っていた
日が傾いたとは言え、炎天下の中で、
汗ばんで笑って手を振っていた ドキッとした
一瞬で彼女だと分かった
会いたくて仕方なかった人だ。
白いブラウスに麦わら帽子という
なんとも妙ちくりんな恰好で、雰囲気も何もなかったが
楽しそうに手を振って呼び寄せるものだから
すごく胸がときめいてしまった 信じられないくらい嬉しくて
ワクワクしてる自分がいることにすぐ気付いた
窓越しに近づいてきた彼女は
彼女「こっちこっち!この細い道曲がってまだ奥がウチだから!」
俺「そっか、とりあえず乗りなよ」
ひとまず彼女を車に乗せた
俺「なーんでそんな恰好なんだよw」
彼女「だって熱いからさー、母さんがかぶってけって言うんだもん」 ごめんなさい
今日は一旦このへんで落ちようと思います
また今日の夜に続きを書きます
読んでくれてた人申し訳ない。 こんばんは
見てくれた人ありがとう
再開したいと思います 脇の細い道に入ると
しばらく上り道のようなものが続いた
ぎりっぎりで車2台がすれ違えるかどうか、くらいの広さの道
両端は草だらけ
場所によっては川で、落ちそうでヒヤヒヤした
とても冷房のきいた車内
彼女「冷房さっむいー」
俺「切ろっか、窓開けよう」 窓を開けると、熱気が一気に押し押せた
俺「うわ、あっち…」
彼女「そうかなー?これくらいがいいよ」
笑って話す横顔を見て、ここまで来て良かったって思った
再び細い道を曲がって、
下って、小さな川にかかる橋を渡った。
彼女「この橋渡ればもうすぐだよ。」
俺「けっこう来たな…よくあそこまで歩いたね。」
彼女「まあね」 橋を渡って、道なりに進んだ
彼女「ここ!この家!」
俺「おお、ここなら車が入れやすい」
道の角に、庭が面している家で昔ながらの素朴な家だった
庭には草や花が生えている
そして勿論大量の虫もぶんぶん飛び回っていた
俺「虫飛んでる…おりたくねー…」
彼女「はー?w」 でも、広くてとても綺麗な庭だった
エンジンを切る、車を降りるとけたたましい蝉の声
この瞬間肩の荷がおりて楽になったが、すごく遠くに来たように感じた
もう夕方で、日は沈みそうだった
俺「おー、いい空気だ。遠かったー」
彼女「あー…お疲れ。早く休みなよ」 玄関に向かうと、外の水道場みたいなとこに人がいた
彼女のお婆ちゃんだ。
俺「あ…こんにちは」
お婆ちゃん「おやおや、これが言ってたお客さんかい?」
彼女「そうだよー」
初対面だけど、優しそうな人だとすぐ分かった
お婆ちゃん「今、茄子洗ってるからね。あとで食べてね」
とニコニコして話してくれた 玄関に入ると、勢い良く彼女の母さんが迎えてくれた
母「〇〇君、久しぶりー。遠かったでしょー」
俺「いえいえ、楽しかったですよ」
とても久しぶりに見た気がする、けど小さい頃から気心知っている人なので
こうして元気に暮らしていることを実感できてとても安心した
母「夕飯まではもう少し時間かかるから、ゆっくししててね」
と言われたので、ひとまず空いている部屋に荷物を放り投げ
一階で冷たい飲み物をいただくことにした 彼女が、
「カルピスしかねーw」って笑いながら持ってきた
そう、俺は小さい頃はあまりカルピスが好きじゃなかった
俺「いや、今はわりと好きだから大丈夫w」
彼女「そうなの?ならよかったw」
居間の隣の縁側の窓が開いていたので
そこに座ることにした 俺「割と風通しよくていいね」
彼女「窓あけとけば割とねー。虫は寄ってくるけどw」
チリンチリン、と音が鳴った
上を見ると青い風鈴が風に揺られて鳴っていた
ああ、これがメールで言ってた…と思ったけど
俺はあえて触れないで、黙っていることにした
雰囲気とかもあったけど、単純に疲れててあんまり言葉が出なかった…んだと思う 特に話すことも無くて、どんどん赤く染まる空を眺めてた
外からお婆ちゃんがじゃぶじゃぶと茄子を洗う音と、蝉が鳴く音が聞こえて
時たま風鈴の高い音が響いた
信じられないくらい夏、って感じ
俺もそこにいて、少し感動してしまうくらい、日本の夏だった
ぼーっとして、本当に時間がゆっくり流れてるんじゃないかと思うくらい いい雰囲気だなーとしみじみ思いつつも
やはりあまり無言もよろしくない、と思った俺は
無理にでも口を開こうと思った
庭を見渡して、沢山の花が咲いていたので
俺「沢山花があるよね。一杯生えてるあのピンク色のは…」
彼女「ああ、さるすべりかな?素朴で綺麗だよねー」
俺「まあどこにでも生えてそうでいいね…」
彼女「何それー」 俺「もっとこうさ、ばーっとひまわりが生えてるようなとこはないの?」
彼女「あるよ、少し歩くけどね」
俺「あるんだー、向こうにはひまわりってあんまり生えてなかったもんな」
彼女「うん」
この時、向こうの話になってしまってハッとした。
それから、またしばらく無言
喋らず、夏の音が頭に響いた
やっちまったかな、って思った 日が沈んで暗くなり始める頃
彼女のお爺ちゃんが畑から帰ってきた
みんなで居間で畳に座って食卓を囲った
その日の夕飯は夏野菜のカレーだった
オクラが並んでて、ビックリした
彼女「〇〇君オクラ好きだったよねーw」
俺「いや、これマジ納豆の次に最強っしょ」
と笑いながらご飯を食べた
オクラが好物なんていいね、と爺ちゃんと婆ちゃんに笑われた ご飯を食べ終わると、
有無を言わさずテーブルにスイカが出てきた
塩をかけるかかけないかで揉めたw
スイカまで頂いてこのままはいけんな、と思い
俺は台所に行って食器洗いを志願した
彼女と二人で食器をいそいそと洗った
慣れないことなので彼女に
「へったw」
と小言を言われながらも黙々とこなした 食器洗いを洗い終えると、
みんなで居間でテレビを見ながらマターリしてた
煙草吸うんじゃない?って言われて
彼女のお母さんがガラスのでっかい灰皿を持ってきた
俺「いやいや、ここで吸うのは…」
と言って俺はそそくさと縁側に移動した 縁側に腰掛けて
一人で煙草を吸っていると
黙って彼女が隣に座った
ハっとして振り向いたもんだから、笑われた
俺「臭いぞ?」
彼女「◯◯君いっつも臭いもんー」
俺「はー?w」
彼女「うそうそw」 煙草を吸ってリラックスしていたので話やすかった
俺「で、どーなのよ?」
彼女「何が?」
俺「こっちは。元気でやってるの?」
彼女「うん。いいところだし、仕事も楽しいよ」
俺「そっか。寂しくはないの?」 彼女「その質問卑怯だねーw
寂しくないワケないじゃん…」
俺「ごめん…」
風鈴の高い音に混じって、ジーっとかリリリリ…と虫の鳴く声が聴こえた
普通に考えれば、今は隣にいるけどまたすぐ離れ離れ
俺もなんだか落ち込んでしまった 彼女「お酒飲む?」
俺「いや、いいかな」
酒を飲むには最高の場だったけど、純粋に味わっていたかった
煙草にカルピス、くらいがちょうど良かった。
俺「明日さ、出かけよう」
彼女「え、そりゃそうでしょ」
俺「ひまわりあるんでしょ?見に行きたい」
彼女「いいよー。まあそれだけじゃないし、色々見て回ろっか。」 それから、あまり言葉を交わすこともなく
部屋に入って一緒にパソコン見たりして遊んだ
風呂に入って、自分の部屋に戻って、一段落
長い一日だった
車で大移動して、彼女に会って
ずっとここにいたいな、と思った 窓を開けて、持っていたペットボトルを灰皿にして、一服。
目の前をひゅんひゅん虫が飛んでいた
空を見ると、思った以上に星が見えた
何故か知らんけど、この時俺泣きそうだった
喉のあたりがなんか詰まって熱くて、
「あ、俺泣きそうなんだな」って悟った 次の日の朝なんだか俺は早起きしてしまった
下に降りると、彼女の母さんが朝ごはんの支度をしていて
「あら、早いねー。〇〇まだ寝てるから、起こしてきたら?」
と言われた
居間ではお爺ちゃんとお婆ちゃんがテレビを見ていた
俺も一緒にテレビを見ていると、彼女が下りてきた
彼女「朝ごはんまだだよねー?」
母「まだー」
というやりとりを交わした すると彼女は俺に向かって手招きをした
一瞬なんのことだか分からずぽけっとしていたら
「来て!」と声に出して言われた
玄関から外に出た
彼女「一緒にやってもらおうと思って」
俺「何を?」
彼女「花の水やりだよ」 俺「ああー、でもこの時間はまだ涼しくていいね。」
彼女「でしょ?この時間外に出ると気持ちいいんだよ」
そう言いながら彼女は水道からホースを引っ張ってきた
俺「朝顔なんてあるんだ」
彼女「ま、一応ね。そっちにじょうろあるから適当にまいといてw」
俺は言われたとおりそこら一帯の花々に水をかけた
本当にいい朝。 一緒に庭で花に水やって
なんていい時間だったんだろう
今でも夢のようだ
ふざけてこっち向かって水うってきたりするんだ
やめろよーwなんつって、中学生か俺らは、って感じ
あーあ…
そんでその爽やかな気分のまま朝飯へ ご飯に魚に味噌汁という、日本の朝
彼女はバタバタして卵を食卓に持ってきた
彼女「やっぱこれがないとさーw〇〇君もかけるでしょ?」
と言って卵を割る
皆で笑いながら卵かけご飯
かくいう俺は卵+納豆かけご飯という最強タッグ 最初こそ、俺がここにいて良いのかという疑問があったが
彼女の家の人はみんなとても優しい
もうすっかり俺はなじんでいた
そのまま婿に行きたいくらいだった
俺「今日はどうする?たっぷり時間があるよ」
彼女「出かけようー夏を堪能しようよ」
俺「車出す?楽だし」
彼女「はー?w歩くに決まってるだろー」
体力には自信がないけど、もっともだなと思った 出かける頃は、すでに暑かった
太陽本領発揮と言った感じだ
俺「うぇ、すでにあちいなー」
彼女「今日は一杯歩くからタオルと水は持ってよね」
そう言うと彼女はタオルを渡してきた
案の定昨日と同じように麦わら帽子をかぶっていて、なんとも決まらない恰好だった
俺「なんとかならんの、それw」
彼女「うっさいよー」
と言いつつもその姿が段々と可愛いと思えてきた まず、きた道をたどる
橋と小さな川が見えてくる
俺「車じゃ全然分からんかったけど、この川いい感じだねー」
彼女「涼しげだよ」
俺「よく分からんけどやたらと花が生えてる」
彼女「私もよくわからんw唐松草くらいかな分かるの。」
と言って彼女は楽しそうに俺を呼び寄せた 橋の上からじゃよく分からないので
俺たちは川辺におりた
俺「あの花は?あのちっこいの」
彼女「わっかんないwこれは唐松草ー」
と言って彼女は俺にギザギザした花を渡してくれた
川いいなーと思って俺は靴を脱いで川に足を入れて遊びはじめた 最初は彼女もためらっていたが、サンダルを脱いで参戦した
水はひんやり冷たくて、なんとも爽快だった ただ痛い
俺「気持ちいいねー夏だわーw」
彼女「涼しいねー」
俺「ただこれ気をつけないと怪我するね、痛い」
川に足をつけてぼーっとしてると彼女が水をかけてきたので
お互い、「綺麗に見えてこの水汚かったらどーする!」
とか言いながら水をかけあった 少しはしゃぎ過ぎて疲れて、
川辺で二人で座って休んでいたら
彼女の母さんが車で通りがかった
母「こんなところにいたwあのさー」
彼女「どうしたの?」
母「もし時間あったら畑言って野菜とっておいてくれないー?
今日おじいちゃん達出かけるんだってー」
彼女「分かったー」
俺はぼーっとしてそのやりとりを眺めていた 彼女「だってさ」
こっちを向いて楽しそうに笑った
俺「じゃあ、行くか?」
彼女「行こう行こうー、夏野菜の収穫を味わえるとは幸せなことだよw」
野菜の収穫なんて、小学生のときの授業以来じゃなかろうか
思えば、その時の授業も彼女と一緒だったっけ すると、彼女は急に走りだした
俺「ええ?どこいくの?!」
彼女「追いかけないとはぐれるよーw」
と面白がって駈け出した
俺「勘弁してよw」
と言って俺はハアハア言いながら彼女に走って追いついた
彼女「うそうそw一回家に戻るんだよ。」 家に着いて、俺は外で携帯灰皿片手に一服決めて、
彼女が出てくるの待っていた
煙草を吸うのもしんどい、
太陽の熱射線と、蝉の声が体をついた。
玄関の奥からバタバタと音がして、彼女が出てきた。
でも、さっきと何ら変わらない白いシャツにショートパンツ
てっきり農作業の恰好でもしてくると思ったのだが。 俺「あーれ、てっきり着替えてくるのかと。ジャージとか」
彼女「違うよー、これ!」
そう言って彼女はグイッとトートバッグのようなものを突き出した。
彼女「それに〇〇君と一緒なのにジャージとか嫌だよー」
俺、この時妙にこの一言にドキッとしたけど、
今思えば本当にどういう意図だったのか
俺「でも麦わら帽子はかぶるんだね」
彼女「仕方ないじゃん」 俺「でも、そんなに肌出てて大丈夫?虫とか日焼けとか」
彼女「大丈夫だよ、気をつけてるし」
確かに彼女は白かった
気を使ってなさそうで、案外そういうことに気をつけてるんだろう
俺は、玄関の脇の水道で顔をおろして水を飲んだ
すっげえ美味かった
でも蛇口が上を向かないから飲みにくいのなんの。 俺はそのまま彼女から渡されたタオルを冷水にジャブジャブと濡らした
すげえひんやりして気持ちいい。
俺「おい!これマジでやばいぞ!」
彼女「えー…」
彼女は最初こそ怪訝な顔をしてこちらを見ていたが
いざ、試してみると
彼女「何これー超いいじゃん!」
俺「だろー?」
そう言って二人で笑って、並んで冷たいタオルを首にかけて歩いた 来た道とは逆。山にそって道をゆっくり登っていく
あまり言葉も浮かばず、しばらく黙って歩いた。
ミミミミミミ…と蝉の声だけが耳を突いた
木陰を通っていたので直射日光こそなかったが、
むせかえるような暑さ。
彼女が大丈夫か、俺は常に
隣をチラチラ見て気にかけた 歩いていると、畑に着いた
俺「おお、けっこう広いんだね」
彼女「今日は、昨日使っちゃったんでまずは茄子をとります。」 楽しそうに野菜を採る彼女を見ていると、
なんだかとても可愛らしくて仕方なかった
畑にぼーっと突っ立って、自分が改めて恋をしていることに気付いた
とは言え野菜をとらないワケにはいかないので、俺も手伝う。
彼女「とうもろこしなってるかな、とってっちゃえ」
そう言うと彼女は器用にとうもろこしをとり始めた
俺も悪戦苦闘しながら手伝った 彼女「たくさんとれたねー。〇〇君ありがとー」
彼女はトートバッグいっぱいに詰まった野菜を見て笑った
俺「野菜をとるなんて、なかなか貴重な体験だね。楽しかった」
重い?なんつってトートバッグの持つ取っ手みたいのを
二人で片方ずつ持った
まるでトートバッグを介して手を繋いでるように
ってかまあ、そうしないと本当に重いってのもあったんだけど 二人でトートバッグを持って歩いていると、
彼女、終始クスクス笑うんだ
「どしたの?」って聞いても
「言ーわない」って笑うだけ
歩いていると、畑にいた知らないおばさんに話しかけられた
「あー、〇〇ちゃん、仲良しさんねー」
と、やや遠巻きに声をかけられた
彼女は笑って「あ、どーもーw」
と言ってたけど、俺も恥ずかしかった 「ちょっと持ってて」と言って彼女は走りだした
何やら、おばさんと談笑してる模様
けっこう遠くだから、もやで霞んで見えたけど、かなり仲良さそうに
俺はそれを見て、彼女は新しい土地でも
彼女なりに頑張って、色んな人に愛されてるんだなぁって悟った
戻ってくるなり、
「もらったーw」
と言って得意げに俺にトマトを見せてきた
「よかった」と笑いつつも、なんだか嬉しくてほっこりした 彼女「けっこう時間かかっちゃったね
一回家帰って、お昼にしよっか?」
俺「それは名案。ちょっと休もうぜー」
そういうと彼女は黙って笑ってうなずいた
登ってきた道を、彼女と二人で下っていく
彼女「せっかくもらったし、冷やしトマトして…」
彼女は一人で料理の構想を言い始めた
俺は笑って、うんうん、とうなずいていた 今でもあの木陰と陽の光が入り混じった下り道が懐かしい
空気を読まずに蝉が鳴いてて、楽しそうに語る彼女
家に着くと、彼女は「ただいまー!」と大きな声を出した
誰もいないのに、彼女のテンションは高かった
野菜を台所に運んで、居間の窓を開ける
窓をあけると、若干風が入ってきて風鈴が音を立てた
彼女「扇風機まわそうぜー」
と言って奥から彼女が扇風機を出してきた 彼女がガタガタとお昼ごはんを作り始めた
おもむろにテレビもつけて、なんだか家の中が妙に活気で溢れた
俺が「手伝うよー」と言ったけど
「男は座ってろーw」と言われてご飯ができるのを待つことに
なんとなく手持ち無沙汰で、俺が扇風機に向かって「あ”ーっ」
ってやっていると、彼女はこっちを向かず台所から
「何やってんのw」と言って笑った しばらくすると彼女は、テーブルに
ガラス食器に並々入ったそうめんと氷を持ってきた
それに、冷やしトマトにチーズが乗っかったヤツと、キュウリの浅漬け
彼女「手抜きでごめんねーw」
俺「いやいや、いいじゃない。まさに夏って感じだね。」
事実、暑くてクタクタだったからこの上ないご馳走だった。
彼女に「とうもろこし茹でる?」
と聞かれたけど、「夜にしよう」ってことになった 他にも料理はあった気がするけど、細かくは覚えてない
ガーーっって扇風機が回る音と、遠くから聞こえるようなテレビの音
二人で冷たくてうめーっていいながら夢中でそうめん食べてた
ご飯を食べていると、空が曇ってきていて、一雨きそうな感じだった
彼女「あー…なんかちょっと嫌な天気」
俺「だねー、外に洗濯物なかった?」
彼女「あったね…」
なんて他愛もない会話をしていた さて、今日はここまでにしたいと思います
また明日の夜か夕方から続きを書きます
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