息は苦しいし、顔面痛いしでかろうじて涙で霞む視界で自分の車を見るとおっさんが俺の車の運転席でごそごそしてて。
「ああ、スマホ!」ってとっさに俺のスマホ探してんだなってわかった。
おれは四つん這いで顔面抑えてただ、ただ茫然としてそれを眺めてた。
おっさんが俺の車のキーとスマホの電源切りながら近寄ってきたときは立ち上がろうと思えば立ち上がれたんだけどそん時は「スマホ壊さないで」「車に傷つけないで」とかそんなことばっか考えてた。
「電源切ったしドラレコも止まってっから続きやろうか」とか言われちゃう始末。
「ナンバー覚えて通報してやる」とか思ったけどスマホもキーも握られてるし俺の位置からおさっさんの車のナンバー見えねえ位置に連れてこらてんのが分かった瞬間
「すみません」「ごめんなさい」
って泣きながら謝ってた。鼻パンとは関係ない涙が尋常じゃないくらい流れた。
「イキってんじゃねんぞこのガキ」
そう言いながら俺のスマホとキーを路肩の奥に投げ捨てて頭を平手ではたかれておっさんUターンして走り去っていった・・・
ナンバーとか見ようと思ったけどそのまま地面を見たまま硬直してしばらく動けなかった。骨折とかしてなかったし脇腹に痣とかなかったから大した強さでやらてたんじゃないと思う、時間にしたら5〜6分の出来事だったと思う。
実はその間軽トラとか来てたんだけど速攻Uターンして戻っていってたのを朧げに覚えてる。
スマホもキーもそのままガサ藪の中に放り投げることもできたのに歩道の見えるとこにちゃんとあって・・・それを拾い上げて車に乗っても10分くらい動けなかった。
今うちに帰ってきて鈍く痛む鼻をさすりながらドラレコにはエンジン切るまではおっさんの車も映ってるし通報してやろうかとか考えてたんだけど・・
「結局道は譲らなかったんだから俺の勝ちだな」ってそう思ってる