>>969 続き

■そんなに簡単な話じゃない

 車体側を見ると、パワーユニットが内燃機関からモーターになってもコストダウン
できる要素は少ない。

 しいて言えば安全性でエンジンルーム内に大きくて硬いエンジンを搭載しなくてよい
ため、いろんなアイデアも出てくるかもしれません。ただ大きなコストダウンになるかと
なれば難しいと思う。衝突安全性には、物理的な対策が必要。

 電子装備類も直近30年で大きく進化したけれど、コストダウンと反対方向へ向かって
ます。2021年夏から自動ブレーキを標準装備していないと認可されなくなっている。

 自動ブレーキシステムを構築しようとすれば、センサーだけで済まない。
ブレーキペダルを踏まなくてもブレーキの油圧を掛けるシステムが必要。10%の
コストダウンすら無理。

 サスペンションやブレーキに代表されるシャシーは、これまた安全に大きく関係して
くるため、コストダウンする余地がほとんどないと思う。

 もちろん最高速60q/hといった極端に速度の低いモビリティならば、ゴルフカートの
ような安価な構造を取れるだろうが、100q/h+αの速度域までカバーしようとしたら
安くならない。

 ブレーキすら高速域や長い下り坂では回生しきれないため、電気系がトラブルを起こし
た時のため現在と同じような容量の油圧ブレーキを必要とするだろう。

 エアコンやAVのコストだって変わらない。

 詳細に分析すると、安くなるのはエンジン+変速機分くらいになる。しかもEVを走ら
せるためには大容量のバッテリーが必要。

 私はエンジン+変速機=モーター+インバーター+バッテリーだと考えてます。つまり
バッテリーの価格が大幅に下がったとしても今のエンジン搭載車と同じくらいの価格に
なる、ということ。

 それでもエネルギーコストが圧倒的に低いEVが圧倒的有利。繰り返すけれど60km
/hくらいまでしか出ないクルマなら安く作れる可能性あります。

■言うだけならタダ

 じゃあ永守CEOはなぜ「5分の1になる」と言ったのか? こらもう簡単。10万円の商品
を見て「2万円にまからんか?」という人っています。「なる」とは思っていないが、
言うだけならタダだ。自分のプライドさえ考えなければ「10%じゃなくデタラメな値引き
要求」をすると注目されます。上手なアピールだと思う。

 唯一ありえるのは中国のGM五菱汽車の「宏光MINI」のような小型EV。最高速105km/h。
実用航続距離120km。エアコン付きで60万円だ。

 徹底してコストダウンすれば、軽自動車なら半額で売れる可能性を持つ。

 ちなみに日本電産はGM五菱汽車に売り込みをして宏光MINIのモーターを受注したという! 
このクルマを日本で売る?