一方、マイルドハイブリッドは、モーター単独で走れるほどの電気の貯えや出力の大きさがありません。モーターの役割は発進と加速を少しだけ補助することです。

 近年、スズキが10秒間だけモーターでクリープ走行できるマイルドハイブリッドを投入しましたが、あくまでもエンジン主体で走ります。そのため、ストロング型ほど燃費も伸びず、パワーの面でも恩恵は少なめです。

 あまり利点が感じられないようにも見えるマイルドハイブリッドですが、じつはコスト面で大きなメリットが存在します。

 ストロングハイブリッドの電池とモーターは大きく重く、そしてシステム全体がとても複雑で、スペースや重量の面で不利というのもありますが、何よりコストがかかるのが難点です。

 高出力を実現するために電圧が高く、例えばプリウスでは200Vから最大650Vもの電圧がかかり、安全のために高電圧の「隔離」と「遮断」が必要になります。

 対するマイルドハイブリッドはシステムが非常にシンプルです。発電機もモーターも専用品を追加するのではなく、通常の乗用車にも搭載されている発電機(オルタネータ)を強化し、モーターも兼ねさせるという簡素な構成になっています。

 ちょっとしたアシスト程度なら電池も大きい必要はなく、電圧も低くて済みます。高電圧に向けた大掛かりな安全対策も不要になり、ハイブリッドシステムをコンパクトかつ軽量、そして安価に作ることができるのです。

 ちなみに、スズキ「スイフト」は、ガソリン車とマイルドハイブリッド車、ストロングハイブリッド車の3種類をラインナップしており、ほぼ同等の装備内容のグレードで、マイルドハイブリッド車はガソリン車より約10万円高、ストロングハイブリッド車はさらに約15万円高の価格差となっています。

 車重もマイルドハイブリッド車はガソリン車より10kg重いだけですが、ストロングハイブリッド車はガソリン車より50kgの重量増です。