ここで問題になるのは、4)の絶対売れないようなクルマを出すケースだ。
メーカーのホンネを聞いてみると、共通して「この5年ほど、忖度したんじゃないかと思うことが多くなって来ました」。
発言力の強い役員クラス(さらに上のこともあるようだ)の意見に誰も異論を唱えないのだという。政治家やスポーツの監督と同じ?

ホンダに『ジェイド』というミニバンがある。3年前の2015年に発売された時の月販販売目標は3000台。
月販目標は、一般的に発売後3年目くらいまでの平均台数を示す。
3年で10万台くらい売るつもりで開発したということ。発売された直後、私は「絶対に売れない」と書いた。
ライバルと比べ高価だし、クルマとしても狭い。

実際どうだったか? 発売した2015年こそ新車効果(出た直後はどんなクルマでも売れる)により月販1000台程度売れたものの、2016は年月販平均500台ヘダウン。
2017年になると月販平均160台。3年間で2万1244台という結果になっている。ジェイド、出た時に多くのホンダ社員も「売れないでしょうね」と言っていた。

なんで売れないと思えるクルマが出るのだろう。当時の経緯を調べてみたら、開発に着手する時点で強く反対する人が居なかったそうな。
確かにクルマという商品、売れるかどうか予想するのは難しい。企画会議で実力のある役員が「こんなコンセプトの新型車なんかどうか?」と発言したら
作る方向で考えてしまうワケ。そもそも強く反論したら、異動させられるか冷や飯を食わされることを考えなければならない。

ホンダの場合、OBに聞くと「伝統的に”わいがや”という雑談のような会議がホンダの文化で、ポジションに関係無く自由闊達な話になった。
役員に噛み付く平社員も多かったですよ。でも終わったら酒飲みに行っておしまい」。

それが最近は役員に直接異論をぶつけられるような社内の雰囲気がなくなっており、どうしてもTOPダウンになりがちだという。
さらにTOPの感性が良ければいいけれど、市場を解っていないと誤ったな判断をしがち。
ジェイドの場合もOB曰く「ストリームの後継車として売れば、乗り代えるお客さんも多いんじゃないか?」となったらしい。