薬師寺戦のプレッシャーに押し潰されそうだった大久保トレーナーは試合前日にありえないほどの飲酒量を飲み、試合当日になってもべろんべろんに酔っていた。
試合開始直前のセレモニー中に大久保トレーナーは薬師寺サイドに対して侮辱行為を働いてしまった。
WBC会長のスレイマン氏の目前の出来事だった為、帝拳サイドは直ぐにマックに詫びて事を収めるために大久保トレーナーを退場させた。
チーフトレーナーである大久保氏がリングサイドに付けなかったことで辰吉陣営は崩壊してしまい試合中の辰吉陣営の指示はバラバラだった。
辰吉は塞がった眼で大久保の姿を探し指示を求めたが、
リングサイドから離れた大久保が叫んだのは30連発のミナクルコンビネーションや!
左手は骨折してジャブが打てず、得意のロープ際に追い込んでのラッシュも完全に封じ込まれしまっているのにどうやって30連発を打つんや大久保さん…

薬師寺に完封されて無様な負けざまをさらした辰吉は試合後に大久保トレーナーにぶち切れた。

薬師寺戦後、大久保は間もなく帝拳ジムから去り、大久保とコンビを組んでいた島田トレーナーも同時期にジムを去ってしまい、入門から蜜月を過ごしてきたトレーナーを失ってしまった。

時は流れ、サラゴサ戦の間際に辰吉が公開練習をしていると帝拳ジムに痩せこけた薄汚い男がふらりと入って来た。
その男は記者に向かって、辰吉は勝ちますよ!サラゴサなんかには負けませんよ!とだけ言い放ってジムを出ていった。
痩せこけた男は大久保元トレーナーだった。
トレーナー時代は90キロもあった為、その痩せこけた男を大久保元トレーナーだと気付いた者は殆どいなかったが辰吉は大久保だと気付いていた。
しかし、辰吉から言葉をかけることはなかったし、大久保からも声は掛けなかった。

サラゴサには薬師寺戦以上に無様な負けをさらし、ついに帝拳の吉井会長から引退勧告を受ける。
間もなく、大久保元トレーナーは死体で発見された。