P18 ■目には見えない現代の戦争の一形態、「条約」
最近になって登場しているのが、各種の「条約」です。
条約というのは、現代の戦争の一つの形態だと私は思っています。
日本であれば、少し前に議論されていた「TPP」条約が当てはまるでしょう。

TPPについては、国民のなかでも「賛成」あるいは「反対」という意見に分かれていましたが、私の意見は「判断のしようがない」というものです。
というのも、われわれ国民がその中身を知ることができないからです。
もしこれが日本の国益にかなうものであれば、当然、賛成します。

ところが、公開されていた情報では、条約を結んでから四年間は、国民にその内容を開示してはいけないことになっているのです。
すべては完全な秘密交渉であって、政府の何人が実際にその内容に接しているのかも不明。
しかも、その契約書は英語で四〇〇〇ページ以上もある。

それでいて、一度条約を結んだら二度と取り消せないという恐ろしい条項まであったとささやかれていました。
TPPの最大の問題は、われわれがその中身を知ることができないという点にあります。
中身を知らないのに、どうやって判断するのか。「良いも悪いも判断できない」としか言えません。

賛成派の政治家や大手メディアはいろいろと煽っていましたが、彼らは一体、どこまで知って騒いでいたのでしょう。(詳しくは第三章を参照)。
このように異常なほどの秘密主義のまま、今後もこういうワケのわからない条約が結ばれていくようであれば、これはもう江戸時代の終わりに幕府が結んだ「不平等条約」の再来だと思います。
秘密交渉ではなく、重要な内容がしっかりと開示され、国民が内容を理解してすべての疑問が払拭され、
そのうえで「やはり日本にとって素晴らしいことだ」という結論が導き出せるのなら、大いに賛成できます。

しかし、内容もわからないのに、「テレビが言っているから」「有名なエコノミストが言っているから」
「政治家が言っているから」というだけで賛成してしまうのは、「インテリジェンス」の風上にも置けません。白紙委任状に実印を押すのと同じことです。
今日でも、このように目に見えない戦争がおこなわれているのです。