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【新国立競技場初戦ゴールデングランプリ?】
TEXT by 寺田辰朗読
田中希実が新国立競技場日本新第1号に!
女子1500mで4分05秒27、“身近”な人の記録を超えて世界へ

 

●3つの案を用意も「無我夢中」の日本新ペース
 女子1500mはスタート直後から田中が先頭に立ち、最後までトップを走り続けた。昨年の日本選手権優勝者の卜部蘭(積水化学)も健闘し、800m付近で4mほど離されたが、1000m付近では田中の背後に迫り、勝負の行方はまだわからなかった。ラストのスプリント勝負になったら卜部優位と言われていたからだが、田中には余力があった。残り1周で猛スパートを見せ一気に突き放した。
 田中の通過タイムと400m毎のスプリットタイムは、以下の通り。フィニッシュ以外は正式計時ではないが、ゴール脇に設置された速報タイマーの数値である。
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400m:1分06秒42(66秒42)
800m:2分11秒91(65秒49)
1100m:3分02秒37
1200m:3分17秒89(65秒98)
1500m:4分05秒27(62秒90)
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 田中健智コーチ(田中の父親)によれば、レース展開には3つのプランがあった。1つは8月12日にこのFacebookに掲載した記事で紹介したように、1周目を65秒と少し速く入り、2周目のタイムを落とす。そして残り700mで切り換える。
 2つめは68秒とゆっくりしたペースで800mまで行き、切り換えるのは残り700mで同じだが、さらに強烈なスパートをする。そして3つめが66秒でずっと押して行き、最後の1周でスパートする今大会で実行した展開だ。
 田中はレース後に「ラストで上げる展開も、前半から行く展開も、どんな展開になっても対応できる練習をしてきました」と、厳しかった今月の合宿を振り返った。
 だが走り始めた田中は、冷静に判断してイーブンペースで進める展開を選んだわけではなかった。
「レースをコントロールしていた意識はなくて、ただただ無我夢中でした。レースの記憶はあまりなくて、走り終わったら日本記録が出ていた感じです。練習はできていましたが、日本新を出せてうれしいですし、安心もしています」