発車を報せるベルに続いて、汽笛が鳴り響く。
 無限列車の発着駅は乗車を急ぐ人々でごった返している。
 まだ新しい蒸気機関車は黒々とした車体が、力強くも美しかった。
 石炭と鉄を混ぜたような匂いが、微量の油の匂いとともにここまで漂ってくる。

 竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助の三名は、駅舎の陰に身をひそめていた。
 彼らの属する鬼隊は公の組織ではない。万一警官に見つかれば、日輪刀の帯刀をとがめられるおそれがあった。
「とりあえず、刀は背中に隠そう……やばっ、もう出発だ」
 ゆっくりと動き出した列車に慌てつつも、善逸が周囲の視線を気にする。
「警官いるかな?」
「いても行くしかないよ」
 炭治郎が腹を決める横で、伊之助が「ぬっはぁーっ!!」と叫んだ。
「勝負だ! 土地の主っ!!」
「あ、バカ」
 嬉々として駆け出す伊之助に善逸が毒づく。だが、
「俺たちも行こう」
 炭治郎が伊之助の背中に続く。
「えっ……? あ、置いてかないでえぇ」
 焦った善逸が遅れて飛び出す。
「ま、待ってぇ〜」
 走り出す列車の後部デッキに飛び乗った二人を追って、最後尾の細い柵になんとかしがみつく。

「炭治郎ぉ、伊之助えぇ」
「善逸!!」
「ぬぉりゃあ!」
 あわや宙づりになった友の体を、炭治郎と伊之助がすかさず引っ張り上げたところで、勇ましく蒸気を上げた無限列車がさらにその速度を上げた。
 周囲の景色が一気に流れていく。

 はじまり、はじまりぃ〜w