失敗してしまったw

宮水三葉、100億の女になる。
この時、彼女は後に待ち受ける運命など知る由も無かった。

宮水三葉、120億の女になる。
父の宮水俊樹町長や勅使河原社長が揉み手ですり寄ってくるようになる。

宮水三葉、150億の女になる。
勤め先の社長他重役の方々が私に対して頭を垂れるようになる一方、
同僚や先輩、後輩社員達は私を避けるようになる。

宮水三葉、170億の女になる。
糸守に住んでた頃からの友人だった早耶香や克彦からの連絡が途絶え、
こちらから連絡しても一向に返事が返って来ない。
彼女らの家に伺ったら、既に引っ越していた。

宮水三葉、200億の女になる。
四葉の、私に対する態度が益々余所余所しくなった。
私を目の前にする妹の表情は、まるで祟り神に触れるかのように萎縮していた。
あれ程平身低頭だった父も、今はもう私に近付こうともしなくなった。

宮水三葉、250億の女になる。
家に帰ると、瀧君の私物が一切無くなっていて、テーブルの上に置き手紙が残されていた。
恐る恐る手紙の中身を確認ししたら、
「俺は三葉の事を愛していた、大切な人だったのは間違いない。だけど…もう俺は限界だ。
 君の価値が上がれば上がるほど、自分の存在が惨めになってくるのを実感してしまう。
 俺はもう、これ以上自分の事を嫌いになりたくない。だから…ここで終わりにしたい。
 三葉………愛してたよ」   −立花瀧−
私は泣いた、これ以上無い程に泣き崩れた。そして、自分が今、とんでもない状況にある事を知った。

宮水三葉、300億の女になる。
何で…何でこうなってしまったんだろうと自問する日々が続くも答えは出ない。
あの日に帰りたい…君の名は。が、初公開された時の頃に戻りたい。

宮水三葉、350億の女になる。
日本の映画興行収入順位で君の名は。が千と千尋の神隠しを抜いて、文字通りの頂点に君臨する。
…だからどうしたというのか?
家族も、友人も、愛する人も…私の周りには、もう誰もいやしない。
数字と、金と、栄誉だけが私の周りをゴミの山のように積り積もっている。

宮水三葉、400億の女になる。
朝…目が覚めると、何故か泣いている。