さやかとの結婚を目前に控え、勅使河原は理由のわからない茫漠とした想いに囚われていた。
ある日ふと乗り込んでいた中央線で懐かしい三葉の姿を見かけたが、声をかけようとした矢先、彼女は何かに憑かれたように電車を降りて掛けだしていく。
どうしたんや、あの形相…あの時、彗星が降ったあの夜と同じ…
俺や、俺があいつを、今度こそ支えるんや!もう逃げたりごまかしたりせん!すまん、さやか…
千駄ヶ谷の須賀神社の付近で三葉にやっと追いついた勅使河原は、決意に満ちた、しかし晴れ晴れとしたような表情を浮かべ、階段の下にたたずむ彼女に近づいていった。