のっけから、世界が入れ替わると向こうの世界のことはほとんど
思い出せない、と念を押されている話だものね。

冒頭、テッシーの家で酒盛りをしている「腐敗の匂いがする」場面で
テッシーの部屋のカレンダーに「2013年」と書かれていたりするけど
世界を移動してしまえば、 前の世界のことは醒めた夢並みに
ボンヤリとしか思い出せない人間が頭を使っても「何か変だ、いや、
そもそも全てがヘンなんだが」で終わるのが関の山だろう。


シベリア抑留されていた人が
「本当にその頃のことが思い出せないんだ。人間の頭ってのは
嫌な記憶は消えるようにできているんじゃないか」とおっしゃって
いましたけれど、現実世界の思い出ですらそうなんですから。

人間はいつだって今目の前の状況に自分の意識とか記憶を
すり合わせて生きてしまうものなのです。