君の名は。を語るにあたって監督自身の作家性と軌道を探るために過去作の話を多くしたい
監督は初期の作品群で続けて「強大な世界に敗北する若者」を描いていた
強大な世界とは第一に、主人公等を引き裂く運命だろう
ヒロインを連れ去る国連軍、永遠に覚めない夢、親の都合で引っ越し…

規模も種類も違えど大いなる流れの前では主人公等は無力である、という点で等しい

ー本当に、あれは特別な夏だった。
 でも僕を囲む世界は、この先何度でも僕を裏切る…(雲の向こう、約束の場所)

第二は時間である
時の流れはどれほど強い想いも変質させてしまうものだ

ーぼくとミカコの時間はどんどんずれていく。
だからぼくは目標をたてた
もっともっと心を固く冷たく強くすること
絶対に開かないとわかっている扉をいつまでも叩いたりしないこと
オレは一人でも大人になること(ほしのこえ)

ほしのこえと秒速5センチメートルはどちらも
同じ物語構造を持っている
(惹かれ合う二人が距離と時間に引き離される、
やがて過去と対峙し感情が爆発する)

キャラクターの周囲を取り囲む綿密な背景美術
ロングショットの多用

そしてゆったりと流れる時間(ゆっくりと降り積もる雪、舞い散る花びら)と10年単位のジャンプが生み出すコントラスト

これらの演出は単にアニメーション表現として斬新なだけでなく、彼が描こうとしたテーマそのものに寄与するものであった