あと、感情の起伏に乏しい主人公の感情表現で顕著だったのが、
主に海で行われる、「心の動揺→髪の毛が浮く」という表現。
この「『はっ』→(ふわっ)」も一体何度やるんだよ、うんざりさせられるくらい馬鹿の一つ覚えだった。
大体当たり前の話だけど、人間ちょっとびっくりしたくらいで髪の毛なんか動かないよ。
冒頭、海がロボットのように機械的に無表情で食事の支度をする場面は、
監督曰く、日常動作だし、朝っぱらから普通そんなにテンション高くないよね、とリアルさを
追求した結果らしいけど、そうして延々と退屈な無表情を見せ付けておきながら、
変なところで漫画的表現を使うから見てる側は失笑を禁じえない。

こないだ勝新太郎が監督・主演した『警視-K』っていドラマを紹介してたけど、
「リアルな刑事は事件の打ち合わせを声高にしたりしない」と言って視聴者に聞こえないような
ボソボソ声でセリフを言わせたり、あらかじめストーリーを知ってたらリアクションが薄くなる
とかで出演者にストーリを知らせずにアドリブで演じさせたり、滅茶苦茶やったらしい。
それは極端な例としても、「監督の無駄なこだわり」によるリアル追及は間抜けな結果に終わる傾向が強いと思う。
(『おもひでぽろぽろ』の皺だらけの気色悪いキャラクターとか、
『アキラ』で発音通りに口を動かす動画とか、今ぱっと思いついた例だけど。)