もちろん伊藤大輔・大河内傳次郎の血煙高田馬場から荒野の決闘のフォンダの
長い足の「官能性」までを説く宮崎は、そんなこと常識として知っている。そして
自分に話を聞くインタビュアーだってそのくらいの常識はわきまえて話を聞いてると
思っている。(じっさい森卓也、渋谷陽一、浦谷年良、叶精二らは、そういう教養の
キャッチボールを当たり前にこなしてる。渋谷なんて受け損なうことがあるせいで
アニメファンにボロクソに言われたりしているほどだ)

そしていわゆる「アニメしか出来ない声優」の演技について、トトロからもののけ姫の
頃あたりに宮崎が頻繁に言っていたのが

「むかし日本の俳優は兵隊と娼婦やらせりゃ上手いと言われたものだけれど、
今だって本質は変わっていない。自然な演技ってものが出来なくて、他人の
目をヘンに意識した不自然な演技ばっかりやっててそれを当たり前だと思ってる。
兵隊が不良に、娼婦がキャバ嬢に変わっただけ。劣等感持ってる男が他人を
意識して虚勢を張ると不良になり、自信のない女が他人に関心を持ってもらおうと
するとキャバ嬢になる。他人と対等な関係の中で自信や品位とかを持って普通の
言葉のやり取りをするってことを声で表現できる人が本当にいなくなってる」

ということだった。きわめて当たり前の、冷静で素直な意見だろ。