「ポン助の春」を観る。1934年。大石郁雄。7分。白黒だが豊かな画面だ。
ディズニーの多大な影響はうかがえるが、それでも絵のスタイルは確立しかけているらしい。日本アニメーション映画クラシックスのサイトにアップロードされている。


「熊に喰われぬ男」を観る。9分。大藤信郎。1948年。白黒。パブリックドメイン
技術はシリー・シンフォニーに及ぶべくもないが、巨人ディズニーにない独自性を出そうと色々あがいてる。
主人公の時折のムーンウォーク、画面の奥から手前に「歩いて」くる描写、
いかにも日本らしい急坂の山道を登る描写、滝壺に落ちそうになる主人公を真上から見下ろすカメラなど
やっぱり創意工夫って大事だし、「日本で最も権威あるアニメ賞」に名を残すような人は違うんだなと実感。


「すて猫トラちゃん」を観る。1948年。政岡憲三監督。白黒。パブリックドメイン。20分。
擬人化した子猫たちの物語だが、実に良く動くし、それ以上に奇妙な色気がある。
現代でも風変わりな萌え絵として、その筋の筋者たちからマニアックな賞賛をもらえそうな絵柄だ。
たぶんパヤオよりやばいタイプのロリコンだろうなあ。いい作品をものしてくれたんだからどうでもいいけど。
面白いカメラワークとかもある。この時代の日本の作品としては突出してるな。


「劇場版BLOOD-C The Last Dark」を観る。原作ProductionI.G及びCLAMP。絵コンテ・監督塩谷直義。
102分。ストーリー及びキャラ原案CLAMP。原作監修藤咲淳一。脚本大川七瀬・藤咲淳一。
キャラデザ総作画監督黄瀬和哉。原作は未読。というか原作がマンガなのかテレビアニメなのかも知らない。
内容は特に序盤が好きになれないけど、作品としては成立しているかもしれない。その旨はここに記しておく。
作品なり自己の知見なりを精査して、成立ぶりの詳細をチェックする気にはなれない。
思えばCLAMPの漫画は、昔から一度も愛読できなかった。
まあ、俺がこういう反応を示すってことこそが、この作品が良い意味で思春期の客のために生み出されたってことかもな。
あと「未成年者保護条例」なるものを設定して、子供たちと官憲を自然に敵対させる遣り口は上手だな。


「東京マーブルチョコレート 全力少年」「東京マーブルチョコレート マタアイマショウ」を観る。
監督塩谷直義。核地雷。美術監督の小林七郎以外の全メインスタッフの顔面を踏み抜きたくなった。
こんな未熟な力量で、よくぞあの谷川史子をアニメ化しようと思い上がれたもんだ。I.Gに良作なし。


「やさしいライオン リニューアル」を観る。原作・演出やなせたかし。製作手塚治虫。制作虫プロダクション。
27分。自分がやなせファンなだけに、中身をいざ観るまでは結構不安だったんだよね。
やなせ氏にアニメの実制作の経験があるとは聞いてなかったし、虫プロの良作も雨夜の星だと思うし。
でも読後安心した。氏はアニメを作りたかったんではなく、絵本や歌作りの実力でもって彼にとっての新天地に挑んだんだとわかったから。
アニメ技術的には、難しいことには何も挑戦してない。だが新鮮かつ彼の作家性にとって必要な挑戦はしている。
結局他の創作ジャンルと同じく、アニメでも志は技術の上に来る。そんな当たり前の真実を証明している。それで本当に充分に満足だ。


「世界名作劇場完結版 トム・ソーヤーの冒険」を観る。監督斉藤博、完結版演出楠葉宏三。
テレビ版は未読。背景がなかなか。キャラ描写も時折悪くないものが混じっている。
作画も近藤喜文・百瀬義行・佐藤好春各氏などが参加してるから、見所もある。
また墓場の盗掘シーンでは、月明かりのない夜の暗さをかなり真面目に描こうとしている。
主人公たち以外の面子は、顔の表情まで真っ暗に近い塗りにしたりな。
ただカンテラには明かり漏れ対策として覆いをつけるべきだった。人気の少ない森の方角以外は。全体的にはそう悪くない。


「BLACK FOX」を観る。90分。総監督野村和也、監督篠原啓輔、脚本ハヤシナオキ(久弥直樹らしいが)。
2019年。メイン三人は全員少女。百合っぽさがやや漂うのも含めてポッピンQ路線。
主人公がくのいちで、スタッフロールやスマホ画面も英語だったから、たぶん海外展開狙ってるんだろう。
まあそこそこ好み。チーズの穴みたく突っ込みどころは多いが、時折は良い画面を作ろうと努めているのもわかる。
この路線ならもう少しあざとく仕上げてほしかったかな。ややGガンっぽいノリで。
さもなきゃONEと同じく、シナリオの穴が客の内面の虚無と共鳴する方向性か。
あとくのいちなら房中術がほしい。たとえ間違っていようと。