「映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ」を観る。104分。監督・絵コンテ宅野誠起。
サッカー絵コンテ石井輝、サッカー作画監督増井俊介、演出臼井文明・宇和野歩・宅野誠起。
3DCGレイアウト門沢奈緒美、脚本高橋ナツコ、原作新川直司。原作その他は未読。
(3DCGの制作スタジオが記されてないっぽいけど、まさかライデンフィルムにそこまでの実力があったの?)
地味かもだが、かなりの出来だ。真実にかすっているか、あるいは手が届いている。
背景美術の一部などが甘いから、作品が真実それ自体にまで高められているとまではいえないが。
(また終盤のイベントは本来かなり強引だから、そのくらいの高品質でなければ見るに耐えなかっただろう)
存外な掘り出し物だ。個人的には21分12秒前後の、主人公のカモシカのよーな足が好きだな。
あと女子中学生主人公のサッカー少女と、部のマネージャーの少女が、部活動で健全にひっついているのが
ちょい百合っぽく、そのくせ唇がふっくらしたキャラデザで、仕込めば幸せなフェラが堪能できそうなのがツボ。
同時にその唇が、しょせん二次元にすぎないはずのキャラに肉感や実在感をもたらす一助となりえている。


「らき☆すたOVA」を観る。42分。原作その他は未読。監督武本康弘。
萌えアニメなので大して期待してなかったが、結構よく出来ている。
キャラクターの「感情」ではなく「気分」を描く作品の場合、ストーリーの構造に頼れないから
細かな芸をたくさん披露してくれなければ個人的にそっぽを向くが、充分に及第点だ。


「ノラゲキ!」を観る。24分。監督安藤裕章、原案・脚本佐藤大。
なかなかシャープでシニカルな短編。旨い酒を一杯軽く飲んだような満足感がある。
オチ自体はありふれてる点とかは、俺は気にならない。あと初回視聴時は一時停止は非推奨。
スタッフロールでキャラ名が「好青年」「オタ女」「中年男」などと
カテゴリー名でのみ示されているのもそれっぽい。個人的好みはオタ女と猫。


「レゴ・ムービー」を観る。100分。ややネタバレあるので注意。
色々と気合入った作品だ。相当優れている、のかもしれない。
実際評判はきわめて良かったらしい。でも俺は、嫌いとは言わないまでも実に苦手だ。
長尺の上映時間を8割がた消費した時点に来て、ああいう似非パヴェル・コウツキーな禁じ手を使うのはありなの?
いかにも「レゴ」の映像化に相応しい作劇とも言えるけど、でも伏線を一箇所くらいしか張ってないはずだし、
そもそも伏線が伏線として機能する種類の展開じゃないよね? 物語世界を統一できてさえいないんじゃないの。
たいていの観客の善男善女はあのインパクトに素直に騙されてくれるんだろうけど、
ガワを剥げば使い古しの親子ネタだし、剥がなくても細部のつくりこみがじっくり見ると甘いし
(子供向けレゴブロックの収納箱まわりとか)
相当ハイレベルとはいえ、要するにウェル・メイドでしかないと思う。
それは例の禁じ手それ自体だけじゃなく、物語中盤のもろもろの傷や、また禁じ手以降の画面作りの緩み方にも言える。
(だから「作品の完成度が大幅に落ちるのを覚悟の上で、子供向け作品として年少者に真正の衝撃を与えたかった」って弁も通用しない)
たとえばハピネスチャージプリキュア劇場版(全71分)では、ラスボス撃破後の66分30秒時点、
主人公とゲストヒロインとの最後の会話で、「出来るよ、つむぎちゃんなら絶対!」と言われたとき、
ゲストヒロインつむぎの横顔に髪がかかり、瞳が見えなくなる。
物語の最終盤においても遠景でそこを描写するって発想を抱けることが、傑作の傑作たるゆえんだし、
他の名匠たちの傑作群も全部このレベルのテンションが保てている。でもこのレゴ・ムービーはそこが弛緩してる。
(ついでに、主人公とつむぎのその会話が、現実でも異世界でもない謎空間でなされている点も、
レゴ・ムービーにおける異世界の取り扱いと比べて、作品と自然に融けあっている)
最近の代用食はずいぶんグルメ志向なんだな、と冷ややかに思う。スタッフロールのいいかげんさも含めて。


おまけ。文化庁メディア芸術祭の、短編アニメの最終選考から、気に入った歴代作品八十数本の雑感。
https://agree.5ch.net/test/read.cgi/mango/1632347113/357