(>>187のつづき)
車掌「ただいま三河安城駅を約130分遅れで通過しました…名古屋でお降りのお客様は…」
彩母「実は、これからの娘の方針などを巡って主人と喧嘩して、親類宅に身を寄せる途中
だったんですが、話してて少し楽になりました。本当にありがとうございます!」
男「そうだったんですか(゚Д゚)何か良くわかりませんが、お役に立てたようで、
解決しそうで何よりです(^ω^)」
彩母「ええ、名古屋の親類囲んで、特急料金の払戻金で、
暇つぶしにひつまぶしでも満喫して帰ろうかしら、ぐふふふ…」
北朝鮮、三池淵管弦楽団による『弦楽セレナーデ」の調べが寒波に乗って日本海を光速で
超えてきた……京都、福井の吹雪は一旦激しくなったが、伊吹山地のブロックで
太平洋側・濃尾平野への波及はかろうじて避けられた。

交通機関の乱れを招いた降雪もピークを過ぎ、小川家にも雪解けの兆しが見られるようだ。
通路側D席に座っている男は席を立ち上がり、荷物棚から彩母のキャリーバックを下ろしてあげる。
コートを羽織った彩母は礼を言うと、荷物棚の白い紙袋を引き手に引っ掛けて降車の準備をする。
男「あっ、同じものを買われてますね」^ ^
彩母「あら偶然ね、娘の名前に似ていてね」
男は床置きのビジネスバッグを肩に掛け、振振り向いてD席にあった白い紙袋を
手にとって降車の列に並んだ。二人は同じ扉から降り、エレベーターで階下のコンコース
へ着くと軽く一礼し、それぞれの方向へ。お互いの姿は深夜の人混みへと消えていった。
(つづく)