(>>136のつづき)
大粒の雪が降りしきる都内の住宅街を還暦近い女性が、傘もささずにキャリーバック
を引いて最寄り駅を目指している。その表情は硬く、時折雪で足を取られそうになり
ながらも、足早に自宅から遠ざかって行く。

彩佳「ふぁぁぁぁ…おふぁよぉぉぉかぁさぁんごぉふぁん…ふぁぁ…」川u_u)
彩母LINE(あなたが起きた頃、突然ですが既に旅行へ出かけています。
探さないでください。身の回りのことは自分でやっておいてください…)
彩佳LINE(今どこ?いつまで?ご飯は?何で?大雪で電車とか止まっちゃうでしょ?…)

指揮台で「弦楽セレナーデ」の楽譜と時計とを交互に見つめる指揮者…流石に今日は、
一旦振り上げたタクトを下ろし、管弦楽団員に早期帰宅を促したようだ(´・ω・`)

その間も彩佳は母にメッセージを連打しても既読がつかず、通話も試みるも反応がない、
父へメッセージを送っても勤務中で返事がこない。
そして、最近見た、掃除後にハンドクリームを塗るあの目覚めの悪い夢の断片が脳裏をよぎる。
彩佳「…やっぱり仕方ないわね!…とにかく今はなんか食べて会社行かなきゃ!」
奮起した彩佳は冷蔵庫からジャムを取り出し、トーストを焼きながら化粧セットを手にとる。
(つづく)