犯罪予告まで招いた朝日によるけいおん批判文

---------------
 高校の軽音楽部に入ってギターを始めた唯と、バンドを組んだ同級生3人の部活動ライフを追う四コマ漫画。
とは言っても、描かれるのは、部室で行われるお茶会でのケーキ品評や、試験勉強にあたふたする姿など、
フツウの女子高生のゆるーい日常。ライブの熱気や昂揚感を伝える「BECK」のような「音楽マンガ」とは違う。
 四コマの基本である起承転結や「オチ」は重視されていない。作品の魅力はかわいらしい萌えキャラマンガ
に親しむオタク文化が醸成したものに、自分なりの物語を想像する能力が挙げられる。そうした読者には、
与えられるストーリーより、キャラの立ったエピソードの断片こそが重要なのだろう。
 ストーリーがないことは登場人物たちが成長しないことである。男性キャラは登場せず、恋愛のように
変化を起こすイベントもほとんどない。演奏の上達どころか、唯が覚えたコードをすぐ忘れることがギャグに
なっている。先ごろ高校卒業という形で最終回を迎えたが、4人は同じ女子大への進学が決まっていて、
ゆるゆるとした日常が続くことを予感させる。
 オチも成長もない日常をユートピア的に描いた本作は、ブログやツイッターといったメディアを介し、他人の
何でもない日々とゆるやかにつながりたい、と願う現代人の志向にぴったりなのかもしれない。

(京都国際マンガミュージアム研究員 伊藤遊)
----------------