文政再生工場の

歳は、30代。使いようによっては、何にでも使える年頃である。外見も、人様より少し顔が爬虫類チックなのをのぞけば、そこまでおかしくはない。
逆に時折見せる眼光の鋭さが、ただ者ではない雰囲気を醸し出してしまったりしている。
なんのことはない、ただの思わせぶりなだけなのだが......。

この沖田、5chレベルの凡人だと、スケールが違い過ぎてが理解が出来ないのだ。

沖田は鋭い目付きで当たりを見渡しながら、竹垣の横で私に向かい頭を下げた。
「沖田です! 作家やります!」
初対面の沖田の挨拶に一抹の不安を覚えた私達は、その挨拶には応えず、沖田を見た。

「あきまへん!!」「作家やりたいですっ!!」

同時だった。私の行く手をふさぐ2人の声が重なったのは、見事に同時だった。
このあたりで、芽生えかけていた一抹の不安は確信へと変わりつつあった。

そこからが大変だった。つい先ほどまで「作家やりたいですっ!」と言っていた沖田が、どこでどう履き違えたのか「作家です!」「肩書き作家です!」「筆持ちます!」
「草稿に筆走る!」「筆が如く!」「お〜い、筆!」「肩書き忘じがたく候」「落筆燃ゆ」「粗にして野だが作家ではない」「アイルビー作家」
「花筆」「筆の城」「作家がゆく」「功名が筆」「坂の上の筆」「筆盗り物語」と連呼し始めたのだ。

私達ごちゃんねらーは初歩的な凡ミスを犯してしまった。
「沖田です! 作家の沖田です!」
「お袋、もう今更作家やめれんねん! わかってくれや〜!!」と泣き叫ぶ沖田の声も聞こえてきた。

これ、多分ここの住人みんなが脳内で変換してるはずやで