慶長五年の関ヶ原、
慶長一九年から二十年にかけての大阪の陣。
これらを経て徳川体制は確立し、天下泰平の世が成った。

すると不思議な事が起こった。

傾奇者や無頼者、または博徒など、
乱暴狼藉や喧嘩などを繰り返す輩が増えたのだ。

戦場で発すべき猛気を散ずるかのように彼らは泰平の世で意気がり、暴れだした。
古参の強者たちは ”ああいう輩は戦場では使い物にならぬ” として相手にしなかった。

日常、己の猛気を治められる者が、いざ戦場で大猛を発せようはずがない。

泰平の世で暴力を使い意気がっている者など、臆病者でしかないのだ。
実に滑稽である。

戦場ではくその役にもたたぬ。