アセム「(小声で)ゼハートがああいう上手い絵を描く才能があるとは知らなかった」
ロマリー「(小声で)まるでニュータイプといわれるティファ=アディールの絵画みたい」
アセム「(小声で)ゼハートはXラウンダーだから。ひょっとしたらXラウンダーはみんな絵が上手なのかもしれない。
    ウチのXラウンダーの弟も絵の才能があったりするし」

 カラスはイラストに感動したのか少しの時間無言で立っていたが、
やがてクラスの生徒全体に語りかけるように口を開いた。

カラス「セーラージュピターこそ真の素晴らしき木星の戦士、先生にとって女神のような存在です。
    セーラームーンにはムーンやマーキュリー、マーズ、ヴィーナス等色々なキャラがいますが、
    先生はジュピターが大好きです。
    木野まことは先生の心をかき乱す、いわば『木星の魔女』といっても過言ではない。
    ゼハートくん作のこのイラストはかわいく、そして愛らしい。可憐でけなげ。強さと美しさ。妖艶さと色気。
    先生が好きな女性像がここにあるといっても間違いないでしょう」

ゼハート「カラス先生にこの絵は差し上げます!」
カラス「おお、ゼハートくん、ありがとう!
    他の人はどうかわからないですが、これは先生にとってとても価値のあるものです」

 そこでアセムは見たのだ。紙をカラスに渡したゼハートがわずかながらニヤッと不敵に笑ったのを。
それはまるで罠にかかった獲物を仕留める猟師のように。

ゼハート「先生、お願いがあります。
     先日の授業で渡された宿題は無かったことにできないでしょうか?」

カラス「――――駄目です」

 宿題を出せなかったゼハート=ガレットはカラスに注意され、
課題は後日再提出ということになった。

 これがアセムが見たゼハートのワイロ作戦失敗の一部始終であった。