『撤回するわ…。強いね…あんたも』
「そりゃ…どうも…」
 お互いに息を切らしながら睨み合う。こちらを見下すニュンペーのモノアイが赤く光っていた。
『いいね…教えてあげる。私はドラフラ・ウィード少佐』
「…ふん。ゲイル・スクワイヤ少尉よ」
『ゲイル…スクワイヤ?』
 ウィード少佐が聞き直した。
『ああ、思い出した。あんたが例の?』
「何よ…」
『あんたの親父さん知ってる。もう死んだって聞いたけど』
 衝撃が走る。少尉は全くこの女を知らない。父が死んだ?
『…何も知らないくせにエゥーゴに居るの?名字まで変えてさ』
「別に…。何か知ってる風だね…」
 少尉は奥歯を噛み締めた。ウィード少佐と名乗るこのパイロットは父のことを知っているらしい。
『ヴォロ・アイバニーズ…。時代遅れな特務部隊の隊長だろ?随分前会った時、娘がエゥーゴに居るって言ってたからね。親不孝なやつもいるもんだと思って覚えてたよ』
「嘘…」
 父の死を、こんな形で知ることになるとは思ってもみなかった。一瞬、最後に見た父の姿が脳裏をよぎった。

58話 データ