娘が物心つく頃には、母ではなく、ひとりの研究員として接していた。言えるわけがなかった。夢の為に娘を研究材料にした自分が、母親などと名乗ることは許されなかった。
いつしか娘は、被験体8号と呼ばれることとなった。
「…8号はどんな様子でしたか」
「エゥーゴの男2人と主に行動を共にしている様でした。特別な事は何もありませんでしたね。気楽に過ごせている様でしたよ」
ワン中尉は特に感慨もなさげに言った。
「差し支えなければお聞きしたいのですが…」
ワン中尉が続ける。
「なんでしょう?」
「彼女はエゥーゴ、或いはカラバに身柄を奪われたのですか?連行されている様には見えなかったもので」
至極当然の疑問だった。