因果地平の彼方

 幻影の中で、ジ・オリジンの容赦ない攻撃がZZガンダムを襲う。
 その度に装甲は削れ、カメラは割れ、関節が軋みを上げる。

カミーユ「あのバカ……! さっさとギブアップしたらいいのに。お前そんなキャラじゃなかったろ!?」

 しかし、何度殴られ、蹴られ、ボロボロになってもZZガンダムは決して倒れない。

カミーユ「どうして……? 何でそこまで頑張るんだよ……」
フォウ「ジュドーはね。カミーユ、あなたを待ってるのよ」
カミーユ「おれを……?」
フォウ「ええ。あなたは必ずリングに戻ってくる。そう信じているからジュドーは立っていられるの」
カミーユ「なんでだ!」
 
 溢れる感情を抑えきれないように、カミーユは地面に両ひざをついた。

カミーユ「なんでそんなに俺を信じられる! こんな、どうしようもない俺なんかを……」
ロザミア「そんなの、兄弟だからに決まってるじゃない!」

 ロザミアの言葉に、カミーユはハッと目を見開いた。

カミーユ「あいつが俺を信じているのは、俺たちが、兄弟だから……?」
ロザミア「そうだよ! 兄弟だからこそ無条件で信じられるんだよ。わたしが、おにいちゃんを信じてるみたいに!!」
カミーユ「ロザミィ……」

 その時、武道館を映していた幻影が掻き消えた。
 同時に、あたりからは何とも言えないイヤなプレッシャーが立ち上る。

ルチル「まずいわ。ここに生者がいるって気づかれたみたい。早くしないと、戻れなくなるわよ!」
カミーユ「でも、いくらあいつが俺を信じてくれても。テレビ版の俺じゃ……」
フォウ「関係ないわ。だってテレビ版のあなたも劇場版のあなたも……どっちも私たちを助けてくれたカミーユじゃない」

 フォウの言葉に、ロザミアもこくりと頷く。

フォウ「それに、あなたは一人じゃない。暴走したって身体を張って止めてくれる兄弟がいる。そうでしょ?」
カミーユ「フォウ……ロザミィ……おれは……おれは……!」

 堪えきれず、カミーユは地面に突っ伏した。そして嗚咽とともに背中を震わせた。

フォウ「カミーユ……もう一度だけ聞いていい? 今でも、テレビ版のあなたはきらい?」
カミーユ「……好きさ。どっちも俺だもの」

 顔を上げたカミーユ。その目に、もはや迷いはなかった。