高橋良輔:富野さんは切れ味のいい鋭いタイプの演出家です。なにかをつくろうとするとき、
おそらく富野さんはあれこれ迷ったり考えたりすることがないのでは。
きっとどこからか結論がスパッと出てくるのでしょうね。
また、富野さんはそういった自分の持ち味を、圧倒的にスタッフに伝えて、再現していきます。
君臨型の監督という感じですね。
技量、情熱、パワーを感じます。
おそらく自分のもつエネルギーのうち、相当な量を仕事に傾けている方だと思います。
私は作品を生み出すためのエネルギーを、仕事以外のことをして充電するのですが、富野さんは仕事をこなすことによって
また新たなエネルギーを充電しているという印象をうけます。
作品をつくるときにも、ふらりと仕事場を離れたりすることなどはほとんどありませんね。
人に会うときも、かならずはっきりした目的をもって会いにいきます。そういう意味ではとてもわかりやすい方だと思います。
富野さんが描くキャラクターについてもそんなに屈折している印象は受けませんね。
むしろ明快だと思います。
富野さんは屈折しているように見せる味付けがうまいのであって、そこがまたキャラの魅力につながっていると思います。
なかでもいちばんうまいと思うのは、権力への野心をもったキャラクターですね。
とてもダイナミックに描かれています。この種のキャラクターは魅力的に描くのが難しいのですけどね…。
あれほどの迫力がでてくるのはもしかしたら、それが富野さん自身の内面ともっとも接近したキャラクターだからなのかもしれませんね。