裸足でベアハッグといった地味で見映えのしない単調な豊登のスタイルに比べ、
レスリングの基礎も知らない馬場は
アメリカで身に付けた、派手な立ち技見せ技を中心とした
活劇的フェイクに飾られたファイトは人気を集めた。
この馬場人気に嫉妬し、
豊登がエースの座に危機感を覚えていたのも事実であった。

何より観客は毛唐より大きな体躯で外人を痛めつける馬場の姿に溜飲を下げた。
力道山がこれまで示して来た敗戦国の
小兵ニッポン人が戦勝国の大男悪党ガイジンを投げ倒すスタイルにカタルシスを得、
拍手喝采を送るというこれまでの
パターンに変化をもたらすものであった。

それを側面から強い影響を与えたのが茶の間に浸透した
テレビの普及であったと指摘する声は多い。
視覚的に訴える派手で誇張された
馬場のスタイルは実にマンガ的で正にテレビ向けにピッタリであった。
テレビでファンになった観客が会場にも足を運ぶという
理想的な市場商法スタイルを実戦していたわけである。