捜査の焦点は「異様な支配」 傷害罪、指導者が“共犯”問われる可能性も

アメリカンフットボールの日本大と関西学院大の定期戦で日大の選手が関学大の選手を悪質なタックルで負傷させた問題で、けがをした関西学院大の選手が大阪府警に提出した被害届が、警視庁調布署に移送されたことが分かった。
警視庁は今後、日大の関係者から事情を聴くなどして慎重に捜査し、傷害容疑などでの立件の可否を判断するとみられるが、専門家は「指導者も傷害罪に問われる可能性がある」と指摘する。
立件の可否で重要なのは行為の故意性だ。
悪質なタックルをした日大の選手は22日の記者会見で、井上奨(つとむ)コーチが「1プレー目で潰せば出してやると監督が言っている」、内田正人前監督が「自分がやらせた」などと言ったことを明かし、故意の反則を認めた。
スポーツ法政策研究会事務局長の西脇威夫弁護士は「指示があったとしても、本人の責任がゼロになるわけではない」と指摘する。
今後は内田前監督ら指導陣の刑事責任の有無が焦点となる。
「潰す」の表現が、故意の反則行為で相手を負傷させる意味で使われていたかどうかがポイントだ。
スポーツ事故に詳しい間川清弁護士は「『潰せ』という指示だけでは具体性に欠ける」と指摘。
指示を録音した音声データがなければ立件は簡単ではないとみる。
一方、西脇氏は「日頃の指導方法や指示の状況などがカギ」とみる。
スポーツ法学に詳しい辻口信良弁護士は「(今後の捜査で)内田前監督やコーチの指示が明らかになれば、共謀共同正犯や教唆犯に問われる可能性がある」と指摘。
暴力団組織の支配と服従の関係のような上意下達の縦社会の存在が背景にあった可能性もあるとして、日頃の部内のコミュニケーションや雰囲気はどうだったのか、部員らが前監督やコーチの言動をどう受け取っていたのかなど実態を解明していくことが必要という。
その上で前監督やコーチによる異様な支配の状況が証明されれば、「社会的責任もかんがみ、問題選手よりもさらに重い刑事責任が問われる可能性がある」と話した。

Sankei Shimbun