【池松壮亮】「新聞記者」が発端…「宮本から君へ」助成金の忖度不交付|日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/264398
2019/11/08

安倍政権下での「忖度」が、芸術・文化の分野でエスカレートしている。

「KAWASAKIしんゆり映画祭2019」では、“安倍友”文化人をこきおろした映画「主戦場」に対して共催の川崎市からストップがかかり、一時は上映中止となった(多数の抗議を受け復活)。

 また文化庁は、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に対し、内定していた補助金の不交付を発表。さらに映画「宮本から君へ」に対する1000万円の助成金も突然取り消した。
文化庁所管の日本芸術文化振興会によれば、麻薬取締法違反で有罪判決が出たピエール瀧被告の出演が理由という。
だがこれまで振興会の助成金取り消しの前例はなく、あわてて交付要綱を今回の決定に沿って改正する後出しの対応が厳しく批判されている。
こうした背景について映画批評家の前田有一氏はこう言う。

■発端は映画「新聞記者」の大ヒット

「すべての発端は、加計学園問題をモデルにした映画『新聞記者』が興収ベストテンに食い込む大ヒットをしたことです。
これまで、この手のガチ政府批判映画が国内で話題になったことはありませんでした。
さらに安倍首相を揶揄したとおぼしき『記憶にございません!』も3週連続1位を達成。
テレビやマスコミの“アンダーコントロール”に自信を持つ官邸も、よもや映画界からの“反乱”は想定外で、震撼したのではないでしょうか。
今回助成金を取り消された『宮本から君へ』は『新聞記者』と同じ河村光庸プロデューサーによる作品で、彼は映画の宣伝であちこちで政治批判を繰り広げている。
そのため“狙い撃ち”されたのだろうと、もっぱらの評判です」

 新井英樹による90年代の人気コミックを、昨年のTVドラマ化に続いて同じスタッフ、キャストで映画化。
池松壮亮演じる不器用ながら正義感の強い営業マンが、最愛の女性・靖子(蒼井優)を目の前でレイプした巨漢の男と決闘し、真実の愛を証明しようとする熱い人間ドラマだ。

ヌードまで披露した蒼井優や、ノースタントで非常階段にぶら下がる超危険なアクションをこなした池松壮亮など、役者と真利子哲也監督の本気が伝わる久々の日本映画で、
誰が見ても公的助成にふさわしい品質です。
レイプ犯の父親役で類いまれな存在感を示したピエール瀧の麻薬逮捕事件にしても、発覚したのは映画完成後の話。
だいたいR15+指定で子供はもともと見られないので、“国が薬物使用を容認”したと誤解される、などという文化庁の不交付理由は言いがかりに近い」(前田氏)

 嫌がらせのような助成金不交付報道で、公開1カ月を過ぎた今も都内の映画館は満員御礼。
結果的には1000万円分以上の話題性と注目を集めた格好だ。いくら政権に忖度しても、もはや潮目は変わりつつある。

(C)2019「宮本から君へ」製作委員会
https://c799eb2b0cad47596bf7b1e050e83426.cdnext.stream.ne.jp/img/article/000/264/398/da27f8c6ee9e4fc7e3353a0dc0d139c420191107135015812_262_262.jpg