「前走後に『リズム良く走らせてあげることができませんでした』と謝る(三浦)皇成を慰めようとし
て、つい『年も年だから、しょうがないよ』というようなことを言ってしまったんです。すると皇成は
『今日は僕がうまく乗れなかっただけ。年齢的に衰えたなんてことは絶対にないですよ。だから長谷川
さんも、そんなことは思わないで、これからも馬を信じて接してあげてください』と逆にたしなめられ
てしまったんです」と、その会話の内容を明かしてくれた。

 15年5月の平安S勝利後に骨折し、翌16年1月に戦列に復帰するものの、またも骨折。長い戦線
離脱を余儀なくされ、低迷しながらも見事に復活した同馬。一方の三浦は16年夏の落馬事故で大けが
を負って約1年間のリハビリ生活。同騎手にとって復帰後の重賞初Vが、初めてインカンテーションと
コンビを組んだ武蔵野Sだった。大きな苦難を乗り越えた人馬だけに、GI制覇に懸ける思いはより強くなる。

「今年のフェブラリーSで、いったん下げた位置から3着に持ってきたのは、皇成のファインプレーだ
と思うんです。GIでいつもと違う競馬をするのは勇気がいることだし、それだけ馬のことを信じてくれ
ていると感じました」と長谷川助手。

 これまで様々な競馬場、距離で重賞を勝ってきた。「本当にすごい馬です。いろんな条件に対応できる
力があり、それを支えているのは基礎能力の高さ。だからGIでも、いつも通りの状態で送り出してあげ
れば、馬もジョッキーもそれに応えた走りを見せてくれると信じています」と同助手は力を込める。

 人馬ともにここを勝てばJRA・GI初制覇。強い絆の力が大舞台で最高潮にまで高まれば、競馬史に
残る“復活劇”も決して実現不可能な夢物語ではない。