たしかに、優秀なビジネスマンになるためには、
処理能力の高さと根回し能力が必要でしょう。
でも、ホワイトカラーのビジネスマンの社会的寿命が
コンピュータの台頭によって尽きようとしているときに、
そのためのスキルを磨いても仕方ありません。
銃や大砲の時代が始まっているのに、
兵士に剣術の奥義を叩き込み騎馬戦で戦場に出るようなものです。

 それなのに、多くの啓発書は相変わらずホワイトカラー教育を志向しています。
で、そういう自己啓発書やSNS上のオピニオンリーダーの言うことを真に受けた人たちが、
いわゆる「意識(だけ)高い系」の大学生になったりする。
これはかなりマズいことで、正直、いまの中学生や高校生には、
とりあえず「“意識だけ高い系”にだけはなるな」と言いたいぐらいです。

 本当に意識が高い、真の意識高い系になる分にはいいんですが、
人間、楽をしたがる生き物なので、頑張ったアピールだけで終わってしまうケースが多い。

 それはもったいないことです。
なぜそうなるかと言えば、いま成功している資本家や上流階層たちは
自分の人生を肯定したいがために、当然ルール作りを自分たちの流儀で行おうとします。
その「自己流のビジネスルール」が書かれたのが、多くの自己啓発書です。

 実際は、その間に世界のどこかでイノベーションが起こり、業態を一掃する。
その敗北の歴史が我々の国の2000年代でした。本当は敗北しているのに、
古くからある「映像の世紀」のビジネススタイルとして、
発信者とフォロワーを分けることで搾取の枠組みを作る。
その結果、生まれたのが「意識だけ高い系」なのです。

 たくさんの違った常識を持つこと。
複数のオピニオンリーダーの考え方を並列に持ちながら、自分の人生と比較し、
どれとも違った結論に着地できないか、常に考えること、そういう頭脳の体力が大切です。