「次の世界」に向けて、どんなことを学ぶべきかを考えるのは本当に難しいことです。
ただ基本的には、
「コンピュータには不得意で人間がやるべきことは何なのか」を
模索することが大事だと言えます。

 それはおそらく、「新奇性」や「オリジナリティ」を持つ仕事であるに違いありません。
少なくとも、処理能力のスピードや正確さで勝負する分野では、
人間はコンピュータに太刀打ちできない。
ざっくり言うと、いまの世界で「ホワイトカラー」が担っているような仕事は、
ほとんどコンピュータに持って行かれるのです。
それは、よく人工知能が職を奪うという恐怖を掻き立てる表現とともに語られますが、
ほんとうの問題は、
どのようにして人の良いところと人工知能の良いところを組み合わせて
次の社会に行くのかということだと思います。
つまり迎合や和解のために、
「人工知能」「コンピュータ」という“隣人”の性質について考えないといけません。
コンピュータとの“文化交流”が必要なのです。

 ところが若い世代に向けて書かれたビジネス書や自己啓発書の類を見ると、
そういう世界の変化や、文化についての議論が前提になっていません。
彼らにとってコンピュータは「道具」という認識にすぎないのです。

 そういった本によくある話題、
たとえば「人から聞いた話は30秒以内にノートに書こう」とか、
「名刺交換をしたらこうやって効率よく整理しよう」とか、
そんなことはコンピュータのほうがよほどうまくやってくれます。