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亡くなった男性は薬剤師だった。コロナへの関心も高く、感染の現状やワクチンに関する記事などを集め、情報を集約していたとみられる。
 戦後の復興とともに人生を歩んだ男性は、今夏の東京五輪を心待ちにしていた。
息子は「自分に何ができたのか、何が正解だったのか。今でも分からない」と複雑な胸中を明かした。

 《4月6日 午前5時 36度7分、午後4時半 37度5分…》
 近畿地方で孤独死した60代男性の自宅からは、体温と計測時間を詳細に記録したメモが見つかった。
 体調面への不安からか、1日に10回も測定を繰り返していた日も。
最後の記入は「39度4分」。数日前までの几帳面な文字とは違う乱れた筆跡が、男性の身に生じた異変を想像させた。

 男性に持病はなかったというが、亀澤社長は「(状況から)コロナ感染の可能性が高いと考えている」と話す。
 警察庁によると、全国の警察が4月に扱った変死などによる遺体のうち、コロナに感染していたのは96人。
うち91人が自宅や宿泊施設などで容体が悪化し、死亡していた。生前に感染が確認されていたのは39人で、死後に判明したのは57人だった。

 ただ亀澤社長の体感はデータとは乖(かい)離(り)がある。
昨春からのコロナ下で、関西クリーンサービスには依頼や相談が急増。
昨年5月ごろまでは1カ月に20〜35件程度だったが、同12月は141件、今年3月は211件にも上った。
このうち、コロナ感染とおぼしきケースも相当数ある。

 亀澤社長が実感を込めて語る。
「公表されている数よりずっと多くの人が、検査すら受けられずにコロナで亡くなっているのではないか」。