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【写真】感染して亡くなった男性の部屋
 「コロナで亡くなった家族の部屋を片付けてほしい」
 大型連休が明けた5月上旬、特殊清掃事業を請け負う関西クリーンサービス(大阪市東成区)にこんな依頼が寄せられた。
 スタッフが向かったのは神戸市内の一軒家。コロナに感染した独居の住人男性(90)が4月末、治療を受けることなく亡くなったという。
 防護服と特殊なマスクを身に着けた数人のスタッフが家に上がる。テーブルに並んでいたのは消毒液やペットボトル。皿の上に置かれたままのパンが、あまりに突然訪れた死を物語っていた。
 部屋には、神戸市から届いたワクチン接種券のほか、コロナに関する新聞記事の切り抜きが入った封筒、ワクチンの効果などを記したとみられる大量のメモ書きも残されていた。

 「マメな性格の人だったのかな」。関西クリーンサービスの運営会社の亀澤範行社長(40)はそうおもんぱかり、
「本来なら孤独死とは無縁の人だったはず。医療が逼迫していなければ、助かっていた命なのかもしれない」と唇をかんだ。
 亀澤社長らは2日間かけ、部屋の消毒や所持品の整理・処分を終えた。

 5月中旬、産経新聞の取材に応じた男性の息子によると、男性は自宅で入院調整中だったという。
 感染が判明したのは4月29日。
病床不足で入院先は見つからなかったが、自分で食事ができ、普通に会話もできる状態だった。かかりつけ医と相談し、改めて保健所に調整を掛け合うことにしていた。
ところが、翌30日に事態が急変。部屋に様子を見に行った介護職員から電話があり、「お父さまが亡くなった」と告げられた。

 「高齢者だし、すぐに入院できると思っていた。後悔ばかりが残っている」。
 看病に向かおうとしたが、遠方にいることや感染のリスクを考えて断念した矢先だったという。