これか
http://www.sapia.jp/read_interview/nurture/1108_1.html

堀口 戸瀬先生が1999年に共同で編纂された『分数ができない大学生』は大きな話題を呼びました。
    先生が大学生の学力低下に関心を持たれたきっかけは何でしょうか。

戸瀬 わたしは1993年から慶應義塾大学の経済学部で数学を教えるようになったのですが、その際に数学ができない大学生が
    
    あまりにも多いことに気づきました。私立の中ではトップクラスの大学、その中でも看板学部である経済学部の学生である
    
    はずなのに、数学の能力がおしなべて低いのです。そこで1998年に大学生を対象に学力調査を行ってみたところ、
    
    小学生レベルの分数の計算ができない学生の割合が、トップクラスの私大でも2割に上っていることがわかったのです。

堀口 学力低下の原因は何でしょうか。

戸瀬 学力低下が目立ち始める少し前にしきりに言われていたのが、「大学に多様な人材を集めよう」ということです。
    てっとり早く多様な人材を集めようとして、入試のレベルを下げてしまいました。

    具体的には入試科目の削減ですね。
    
    私立文系なら英語と国語、あるいは英語と社会という2科目だけで受けられるところが増えてしまいましたし、
    国立でも後期入試などで1科目入試に近いことをやり始めました。
    
    その結果、大学で学問を学ぶために必要な科目、経済学部なら数学、医学部なら生物などをマスターしないまま大学に
     入ってくる学生が増えてしまったわけです。そして、そうした学生を引き上げるようなフォローをするのではなく、教える
    内容のレベルを下げることで対応してしまっているのです。

戸瀬 信之 とせ のぶゆき●慶應義塾大学経済学部教授。
1959年富山県生まれ。1983年東京大学理学部数学科卒業、1985年同大学院理学系研究科数学専攻修士課程修了。