逆に言えば、『ラ・ラ・ランド』と『君の名は。』のヒットが示しているのは、スマホの使い過ぎの
弊害が出始めているということではないでしょうか。スマホを使い過ぎて、多くの人が知的な面で
非常に怠惰になってきているのです。

第二の共通点は、どちらも過去の名作へのオマージュという要素が強いことです。
『君の名は。』には、過去の名作アニメや映画を彷彿とさせるシーンがところどころに出てきます。
この点についてアニメ業界の関係者に聞いたところ、「新海監督はパクリとも言えることを悪い
とは思っていない」と言っていました。正確に言えば悪くないと強弁しているのではなく、
それはアニメ好きにとってごく普通のことと思っているようで、44歳という年齢とアニメオタクという
出自を考えると、自然とそういう感覚になっているのでは、と言っていました。

これらの事実が意味するところは、著作権に関する意識の明確な変化です。私のように歳をとっていて、
かつコンテンツ業界に関わっている者からすると、著作権を尊重して守ることは当たり前であり、
パクリと言われかねない行為は慎重であるべきと思えるのですが、子どもの頃や多感な時期を
デジタルやネットがあって当たり前の環境で過ごした若い世代やオタクたちにとっては、作り手の立場
からであっても、それは古臭い非常識に過ぎないのでしょう。

そう考えると、もちろんデジタルの時代といえども著作権の保護が必要なのは当然であり、
かついまだに導入が主張される“日本版フェアユース規定”(ネット上での複製を自由にする)
などは論外であるものの、保護の度合いの見直しは不可欠ではないでしょうか。