貧しさによって日常生活において心理的ストレスの強い状況で生活している人びとは、そうしたストレスの小さな人びとと比べて、余暇時間を与えられると得てして享楽的で非生産的な遊びにだけ費やしてしまう傾向が強くなってしまうことも明らかになっている。

貧困層は、日常生活で断続的に味わわされる強い心理的ストレスをどうにか発散させるために、短期的に強い快楽を得られるような行為
たとえばギャンブルや飲酒などに没頭せざるを得なくなるのである。

貧しい人びととは対照的に、高所得層はそうした生活防衛によって要求される心理的ストレスやコストが小さいため、
余暇時間には読書やセミナーなどの自己研鑽あるいは美術・芸術鑑賞といった文化的・教養的活動に回すことができ、
それが結果的にかれらのビジネススキルの上昇やインスピレーションの向上に貢献している。

手持ちのカネの多寡によって生じる「生活をやりくりするしんどさ」の格差は、それ自体が「認知的格差」に直結し、
貧しい人をますます貧困に絡めとられるような行動に駆り立て、富める人をますます豊かで上質な暮らしにつながる行動を促進する。