そのうちに、お日さまはしだいにあたたかさをまし、ヒバリが美しい声で歌いはじめます。
ついに、春が来たのです。
アヒルの子は体がうきうきしはじめると、つばさをはばたいてみました。
すると体が、浮くではありませんか。
「ああ、飛んだ、ぼくは飛べるようになったんだ」
アヒルは夢中ではばたくと、やがておほりにまいおりました。
その時、おほりにいた白鳥たちが、いっせいに近づいてきたのです。
「ああ、みにくいぼくを、殺しにきたんだ。 ぼくは殺されるんだ。 ・・・でも、かまわない。
みんなからひどい目にあうより、あの美しい鳥に殺された方が、いくらましだかしれない。 さあ、ぼくを殺して!」
アヒルの子は、殺されるかくごをきめました。しかし、そうではありません。
白鳥たちはアヒルの子の周りに集まると、やさしく口ばしでなでてくれたのです。
そして白鳥の1羽が、言いました。「はじめまして、かわいい新人さん」
「えっ? 新人さん? かわいい? ぼくが?」
ビックリしたアヒルの子は、ふと水の上に目を落とすと、そこにうつっていたのは、もうみにくいアヒルの子ではありません。
まっ白に光りかがやく、あの白鳥だったのです。
冬の間に羽が抜けかわって、美しい白鳥に姿をかえていたのでした。
「あたらしい白鳥が、一番きれいだね」 みんなの声が、聞こえてきました。
おしまい