コムスンの不正受給問題で揺れるグッドウィル・グループに、今度は大手銀行を巻き込んだアングラ勢力への巨額資金提供疑惑が浮上し、事件化の様相すら見せている。
 疑惑の舞台は、昨年末のグッドウィルによる人材派遣大手クリスタルの買収劇。クリスタル株を前オーナーから約500億円で買い取ったのは「コリンシアンパートナーズ」という投資ファンドで、同ファンドを運営する投資事業組合にグッドウィルは約880億円を出資していた。実はこの投資事業組合には、A氏なる人物も約300億円を出資しており、クリスタル買収後、A氏は同社株と組合に残った資金を含めて「380億円もの利益を手にした」(事情通)という。
 問題は、そのA氏の背後に広域暴力団の影が見え隠れすること。つまりグッドウィルが、クリスタルを買収する過程でアングラ勢力に巨額の利益供与を行ったのではないかという疑惑である。
 さらに不可解なのが、「グッドウィルなど投資事業組合の出資者に対し、クリスタル買収資金としてみずほ銀行六本木支店から1000億円規模の融資が実行された」(同)ことである。今回のような不透明な買収スキームにこれほど巨額の融資が行われるのは「常識的にはあり得ない」(大手銀行融資担当者)。にもかかわらず、同行はごく短期間でこの案件を決済・実行しているというのだ。
 グッドウィルの折口雅博会長をめぐっては「警視庁がコムスンの介護保険不正受給による詐欺罪での立件を狙っている」(警察関係者)との情報がある。もっとも、現場の不正行為がトップの指示によるものだったと立件するのは容易なことでない。むしろ利益供与事件のほうが立件はしやすいうえに、仮にみずほ銀行が関与しているとなれば、それこそ一大経済事件である。
 1997年の旧第一勧銀による利益供与事件を例にとるまでもなく、銀行が暴力団や総会屋などに資金を提供する不祥事はこれまでも度々発覚している。問題の支店は、旧第一勧銀時代から問題案件を多く抱えているといわれてきただけに、今後の展開から目が離せない。(後略)