かつての日本は長く「一億総中流社会」などと言われてきたが、今やその影もなくなってしまった。
格差拡大が進み“階級”が固定化してきている。そして、巨大な下層階級「アンダークラス」が新たに出現してきた。
アンダークラスの平均年収はわずか186万円で、男性の未婚率は66.4%。
その数はおよそ930万人だが、2025年には1000万人を突破するとみられている。

雇用情勢の改善により人手不足が深刻化する日本で、10年ほど前に話題となった「ワーキングプア」の問題は今や消えてしまったかのようだ。
しかし、格差は「自己責任」の名目の下で放置され、日本は今や「階級社会」と呼ばれる状態になっている。

家族さえ持てない貧困
最大の問題は、貧困層を含む「アンダークラス」と呼ばれる階級が拡大の一途にあることだ。
 「アンダークラスの中心となっている非正規雇用の労働者は、正規雇用の労働者と比べると、不安定な状態に置かれており貧しい。
貧困のために結婚して家族を形成することさえできない状況は、倫理的にも非常に問題です」
アンダークラスの平均年収はわずか186万円、世帯年収でも343万円にとどまる。
そして男性の実に3分の2が未婚だ。
大量の非正規労働者が登場し始めたのはバブル経済末期の1990年頃からだが、
その頃、まだ20歳前後の若者だった非正規雇用第1世代が今や50代前後に。
そして、大学生の就職率が6割を切っていた"就職氷河期"の大卒者(70年代生まれ)の一部が
非正規雇用のまま働き続け、あと十数年すれば順次60代に。
彼らの中には年金を受給できず、生活保護を受けることが確実な人たちもいる。
転落すると、抜け出せない
たとえ現在、新中間階級や正規労働者階級に属していても、
病気や親の介護などで一度会社を辞めてしまうと、アンダークラスから再出発せざるを得ないケースが少なくない。
そして、いったんアンダークラスに転落すると、そこから抜け出すのは容易ではない。
 「アンダークラスは現時点では、929万人。日本の人口は減少するにもかかわらず、
25年には1000万人を超える。アンダークラスの多くは子供を持たず"一代限り"の人が多いはずですが、
企業が非正規労働者を求めるため、中間層の子供たちが新たにアンダークラスに流れ込む可能性が高い」と橋本さんは言う。