「日本株式会社」は「ジョブ型雇用ではなく、メンバーシップ型雇用だ」とよく言われるようになった。
メンバーシップの大本の組織の維持が最大の目的であるから
スキルに対して報酬を支払うという発想はなく、組織に対するロイヤルティに対して報酬を支払う。

面接試験では、組織に対するロイヤルティと協調性が判断される。
「同僚とうまくやっていける性格の人間であるか」「組織に対してロイヤルティを持つタイプなのか」を判断する。
野球部やラグビー部出身者の評価が高いのは、経歴から“組織人間”であることが実証されているからである。
これを通った人は、部長クラスの管理職面接にたどり着く。
ここでは、「上司とのコミュニケーションがうまくできそうか」「人間関係をうまく築けるか」が評価される。
つまり、メンバーシップ型の就職面接で評価されているのは「組織に対する協調性・ロイヤルティの高さ」なのだ。

その結果、でき上がるのが、これといったスキルがない、自分の働いている会社の人脈で生きる“会社人間”である。
会社内の人間関係と社内政治に詳しく、上司の考えていることを忖度し
上司の意向に沿うように仕事を進めることは得意だが、社外で売ることができるスキルは何も持っていない人々である。

その中で昇進していくのは、ロイヤルティが最も高そうな人。
その高さがどのように評価されるかといえば、上司の言うことを聞くかどうか、つまり「従順な人間であるか」である。
こうして昇進競争は“イエスマン競争”となる。

いつもイエスということができない人、自分の意見を持ち、どうしてもそのとおりにやってみたい人は、不満を感じ転職を考えるようになる。
しかし、こうした人は必ずしも恵まれない。なぜなら、売れるスキルがないから、転職先が見つからない。
これがメンバーシップ型雇用の実態である。
つまり、就職時点からロイヤルティ重視の採用が行われ、
入社してからもロイヤルティの高さを判断するためにやっているかのような転勤・異動が行われる。

上層部にいる役員も、このシステムの中を巧みな遊泳術で泳ぎ切り、向こう岸にたどり着いた人たちだ。
彼らの心には、部下をロイヤルティの高さで判断する習慣が染みついており、
特定分野で高いスキルを持った人間を評価しようという気持ちはない。