「19世紀のヨーロッパの政治秩序を構成していたのは絶対主義の王政に基づいた『国民国家』であった。
・・・当時のヨーロッパの政治秩序においてはこの『国民国家』と『階級社会』の衝突は見られることはなかったが、その中で『ユダヤ人』は階級社会から隔絶されており、また平等な国民の一員として国家に保護されていた集団であった。
 そのために『国家に対する不平不満が生じるとその矛先がユダヤ人に向けられる』ようになる。
 これが全体主義に向かう『前段階』であった。」

「20世紀においては『国民国家』とそれに伴う『階級社会』が転換することになり、『少数民族や人権問題の出現、大衆社会の成立』が認められる。
 国内政治において政党が代表していた階級社会が消失したために、政党によっても代表されない孤立化した『大衆が表面化した』のである。」


「ソ連について言えば、『スターリン』が集団農業化と有産階級の撲滅により個々を孤立無援にすることで、『大衆社会を成立させた』とする。
 この大衆は自らの政治的発言を階級政党とは『別の政治勢力として集約しようと試み、『プロパガンダ』を活用する全体主義運動を支持する』ことになった。
 全体主義は大衆の支持を維持するために、また全体主義が体制として機能するためには『テロル』と『イデオロギー』が重要である。
 『テロル』は『法の支配』によって確立されていた自由の領域を排除し、『イデオロギー』は一定の運動へと強制することで全体主義を制度化した。」


「全体主義体制が問題であるのは、『個人性をまったく殲滅するようなシステムをつくること』にある。」