107年ぶりの甲子園優勝を成し遂げ、大フィーバーを巻き起こした慶應高校(神奈川)だが、意外にも、同校OBの間では、「大阪桐蔭のような常勝チームになるのは難しいのでは」という見方が大半だという。

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懸念される慶應ならではのシステムとは
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 従来の"高校野球"の概念を覆す「エンジョイ・ベースボール」には人気が殺到しそうなものだが、そこには慶應ならではの事情がある。同校関係者が解説する。

 「慶應は創設者・福沢諭吉の精神に則り『文武両道』を基本としています。たとえスポーツに秀でた能力があっても、決して勉学を疎かにしてはならない。そのため、野球がうまいというだけでは入れないのです。

 野球部全体で推薦組はわずか2〜3割程度とされている。また、推薦入学には高いハードルがあり、中学での内申点は最低でも38が必要です。これは全科目が、5段階中4以上が必須となる。さらに作文、集団討論、面接などの試験が続き、瑕疵があれば容赦なく不合格が言い渡されてしまいます」

 また、慶應は他の”野球高校”と異なり、特待生や、それに伴う奨学金といった制度も用意されていない。3年間で300万を優に超える学費のほか、部費や遠征費もかさむ。金銭的な理由で慶應を断念する家庭があるのも事実だ。

 さらに現在の高校球界は、青田買いが加速。中には中学2年で高校に内定している選手もいる。推薦入学に高いハードルがある慶應は、ますます不利になっている。

 「慶應は入学を確約できないので、他の強豪校とのスカウト合戦で負けてしまう。『入学は約束できませんが、慶應を受験してください』とお願いするわけですから、どうしても優秀な選手を集めにくいのです」(同前)

 チーム作りにおいても、慶應は独自のやり方を貫いているのだ。

 さらに参考記事『高校野球の“非常識な部分”を変える…甲子園優勝! 慶應義塾・森林監督が語る「慶應に課せられたミッション」』では、慶應高校を優勝に導いた森林監督の指導や理念について迫っています。

 「週刊現代」2023年9月9・16日合併号より