強豪・大阪桐蔭の甲子園を制するチーム育成法
最強のチームに最強の監督術あり

高校野球の強さは「監督が8割」
そんな大阪桐蔭の強さの秘密は? と聞けば、優秀な選手をスカウトしているからと思う人が多いだろう。しかし、高校野球は選手を集めるだけで勝てるほど甘くない。
高校野球で強くなれるかどうかは、監督の力が8割以上といわれている。
「高校野球は監督しだい」という声もよく聞く。東海大相模の門馬敬治監督もこう話している
「大阪桐蔭にはいい選手が来ていますが、いい選手が来るだけでは勝てません。本気で日本一を、プロ野球選手をめざす選手たちがいて、西谷が彼らを鍛えています。だから勝てるんです。
(元横浜高校の)小倉(清一郎)さんも、『いい選手が来てもいい練習をしないと勝てないからな。いい選手が来て、それをしっかり鍛えた後に勝利があるんだから』とおっしゃってました」

「凡事徹底」
では、大阪桐蔭の西谷は、いかにしてこれほど強いチームを育てているのだろうか。
西谷自身は「特別なことは何もしてません」というが、じっくり話を聞いてみると、10のポイントが浮かび上がってきた。と同時に、
西谷の指導を貫く骨太の方針が「凡事徹底」と「徹底した個別指導」にあることも見えてきた。
たとえば、「全力疾走」や「大きな声を出す」、「低く、鋭い打球を飛ばす」なんてことは、そのあたりの公立高校でも取り組んでいるテーマだろう。
大阪桐蔭では、全国のトップクラスの選手たちが「日本一の全力疾走」、「日本一の声」を常に意識して実践している。西谷は誰にでもできる凡事だからこそ、徹底してやり切ることが大切だという。
「高校野球は2年半で約1000日です。その約1000日で、その後の人生が決まる。それぐらい大事な時間なんだということを考えて、やはり己に勝つ、自分に妥協しないということが大切です。
自分に甘えているうちは成長しないですよ」
打撃練習でもお互いに声をかけ合って低く、鋭い打球を意識する。打ち上げてしまったら、それがどんなフライであっても全力疾走で二塁まで走る。
走攻守すべてにおいて意識が高く、かつ細部にまで意識の行き届いた練習は、見ているだけで「そりゃあ、強いはずや」と感動する。大阪桐蔭は強豪私学でありながら、公立高校にも見事なお手本となっている。