○「単純回帰」ではない平田監督が掲げる「守り勝つ野球」

平田監督になってから、打撃重視、個の力を重視した「パワー野球」
「シンプルな野球」に傾倒するあまり、「緻密さ」がなくなり、野
球がなんとなく「大雑把」になってしまった。
「何とかしてくれる」という神がかった雰囲気も、期待感も薄れ、
甲子園であっけなく敗れ、「横高らしさ」も無くなってしまった。
甲子園で勝てない現実。投壊状況で負けた鎌学戦の現実。
打撃重視の野球では勝ちきれない現実に直面し、平田改革2年の成果
と反省に踏まえてたどり着いたのは、横高野球の「原点」を振り返る
ことだった。
「点を取られなければ負けることはない」「守備からリズムをつくる」
横高が培ってきた「守り勝つ野球」に立ち返り、平田改革で実践して
きたフィジカル面の強化を「ブレンド」した「新生横高野球」へと軌
道修正したのである。
これは単純に昔の横高野球に戻ったわけではない。
「新生横高野球」が攻守で進化しているということなのだ。
現実的な野球戦術において守備力重視に立ち返ろうとしているのだが、
平田改革の本質的な部分を変えようとしているわけではない。
言うまでもなく、「勝利至上主義」に基づく「勝つ野球を叩き込む」
指導者からの一方的なステレオタイプの指導を根本的に変えて、選手の
個性を生かした、選手の自主性・主体性を重視した指導へと変えてきた。
これが平田改革の本質的な改革部分なのである。
この3年間の取り組みはしっかり根付き、選手自身の内的な取り組み
によって「守り勝つ野球」が実践されているのである。
平田監督のスタンスは変わらない。
金足の吉田から12安打打ってほぼ「攻略」したのも、監督は「相手と
自分の特徴をつかんで考えなさい」というアドバイス程度の指導で、
選手自身がミーティングを重ね「吉田対策」を練ったものだった。
今や恒例になった選手だけのミーティングは毎日1時間行なわれている。

このような取り組みを見れば、かつての横高野球の「単純回帰」では
ないことが良くわかる。
平田改革によって、「やらされる野球」から「自ら考えやる野球」が
新たな伝統になりつつある。 。