元硬式野球部員の少年3人が知人の少女に売春させたとして逮捕された拓大紅陵高
(千葉県木更津市)は12日、夏の千葉大会1回戦で秀明八千代高と対戦(ゼット
エーボールパーク=同県市原市)。11−0でコールド勝ちを収めたが、春夏通算
9度の甲子園出場を誇る名門を襲った衝撃はあまりにも大きい。(海野慎介) 

 試合開始前、球場前で待機する同校応援団のうち、おそろいのえんじ色のTシャ
ツを着た、選手たちの父母とみられる人たちに狙いを絞り、今回の事件に対する受
け止め方を聞いて回った。ところが、「今回のことについてはわからない」「何も
知らない」「父母会を通してください」と一様に口を閉ざした。

 「口止めでもされているんですか?」と聞いてみたが、「知らないものは知らな
い」との返答。

 すると突然「あんた、こんなところで何をやっているの? そっとしておいてあ
げればいいじゃないか!」と年配の男性が割って入ってきて怒鳴り、記者もつい「
他の部員が頑張っているからなおさら問題ですよ」と反論。男性は「だから、そっ
としておいてやれっつーの!」と吐き捨てると、足早に観客席に消えた。ピリピリ
とした緊張感がみなぎっていた。

 試合には大勝したものの、ナインの顔に弾けるような笑顔はない。

 試合終了後、沢村史郎監督に「逮捕された3人はどのような性格だったのでしょ
うか」と聞いてみたが、沢村監督は「僕の方から答えるのは差し控えさせていただ
きたい。申し訳ありません」。

 さらに「過去には不祥事で出場を辞退した学校もある中、出場に踏み切ったのは
なぜですか」と尋ねると、「校長先生のコメントそのままですね。昨日学校長がコ
メントしたことを全て聞いた上で、私に質問されていますか? それをしていない
のであれば、ちょっともう一回見直していただいて、それ以外のことであれば、私
が答えられることは答えます」と語気を強めた。

 前日の11日、同校の森章校長は報道陣に対応し、逮捕された3人が2月から3
月末までにいずれも自主退学していると説明。「部員の夢や希望を摘みたくない。
出場辞退は考えていない」と語っていた。

 しかし、日本高野連は千葉県高野連に報告書の再提出を求めており、現段階では
まだ「処分できない」としているに過ぎない。事態はまだ収束していないといえる。

 試合中、同校側スタンドから聞こえてきた力強い歌声は、応援歌「青天の覇者」
だった。前代未聞の不祥事を同校野球部は乗り越えられるだろうか。